【注目】廃棄物集中処理施設で原因不明の汚染水漏れ
4月13日(水曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点から、事故原発がおかれている状況を考えます。
※ 情報を追加して更新します
3号機原子炉建屋除染遮へい工事で使用しているトレーラーから駆動油が漏れる
※4月12日午後5時27分頃、5.6号機開閉所西側道路において、3号機原子炉建屋除染遮へい工事で使用しているトレーラー後輪付近の下部から油が滴下していることを、協力企業の作業員が発見した。
当社社員が当該車両後方の油圧シリンダーより駆動油の滴下を確認した。油圧ホースを固縛し、滴下の停止を確認した。
滴下した駆動油の範囲は約4m×3.5m。午後6時15分頃、当社社員が吸着マットにて回収済み。滴下した油は、路面に滴下していたが、付近の排水溝には流入していないことから、環境への影響はない。午後6時40分に双葉消防本部より「危険物の漏えい事象ではない」と判断された。
引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|福島原子力事故に関する更新|東京電力ホールディングス株式会社 2016年4月13日
3月23日に続いて、セシウム吸着装置関連施設で原因不明の汚染水漏洩
※4月12日午後5時30分頃、焼却工作建屋1階の床面に、約10m×10m×1cm程度の水溜まりがあることを、当社社員が発見した。建屋内全体が堰構造となっており、溜まり水は、建屋外へ流出せず建屋内に留まっており、流入がないことを確認している。
当該の溜まり水の分析結果は以下のとおり。
全ベータ :800Bq/L
セシウム134 :120Bq/L
セシウム137 :540Bq/L
水溜まりを確認したエリアにはセシウム吸着装置で処理した水を移送している配管を敷設しているが、当該処理装置の処理水と溜まり水の放射能濃度の比率から、当該配管の水ではないと判断。
なお、至近のセシウム吸着装置の出口水の分析結果は以下のとおり。
(4月3日採取)
ストロンチウム90:7,200Bq/L
セシウム134 :検出限界未満(検出限界値:110Bq/L)
セシウム137 :230Bq/L
今後溜まり水の発生原因などについて引き続き調査を実施していく。
引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|福島原子力事故に関する更新|東京電力ホールディングス株式会社 2016年4月13日
【解説】3月23日には高温焼却炉建屋(雑固体廃棄物減容処理建屋:第二セシウム吸着装置(サリー)が設置されている)内で、セシウム吸着装置(キュリオン)からの工事中の配管から高濃度汚染水の漏洩が発生している。
今回はセシウム吸着装置が設置されている焼却工作建屋内での漏洩。
3月23日に漏洩した汚染水の濃度としては下記の数値が公表されている。
・セシウム134:63,000 Bq/L
・セシウム137:320,000 Bq/L
・全ベータ :480,000 Bq/L
今回の漏洩水の濃度は、
・セシウム134 :120Bq/L
・セシウム137 :540Bq/L
・全ベータ :800Bq/L
となっていて、東京電力の説明の通り、放射能濃度の比率は異なる。また、セシウム吸着装置の出口水ではストロンチウム-90(全ベータの主たる放射能)は高く、セシウムは低いので、漏れたのが出口水であるとも考えにくい。
今回の発表で東京電力の説明はここ止まり。どこから漏れたのかは分からないが、とにかく汚染水が漏れたということ。
言い換えれば「原因不明の汚染水漏れが発生」という、恐ろしいインシデントだ。
○前回の漏洩関連の参考資料
水処理設備の放射能濃度測定結果(3月8日・3月24日採取分)
【解説】単位がBq/cm3である点に要注意。1リットルあたりに換算する。
・雑固体廃棄物減容焼却建屋(HTI)滞留水のセシウム-134は5,000,000Bq/L
・雑固体廃棄物減容焼却建屋(HTI)滞留水のセシウム-137は23,000,000Bq/L
・第二セシウム吸着装置(サリー)処理後水(B)のセシウム-134は300Bq/L
・第二セシウム吸着装置(サリー)処理後水(B)のセシウム-137は1,500Bq/L
・淡水化装置入口水のトリチウムは350,000Bq/L
・淡水化装置出口水のトリチウムは340,000Bq/L
・淡水化装置濃縮水のトリチウムは340,000Bq/L
・淡水化装置濃縮水の全ベータは13,000Bq/L
多核種除去設備(既設ALPS)配管フランジ部からの滴下の調査結果。原因はガスケットの犠牲陽極の溶出
3月25日に発生した核種除去設備A系の配管フランジ部からの滴下についての調査報告
【解説】多核種除去設備では、さまざまな核種を沈殿処理するために多くの薬品が使用されている。今回の漏洩の原因となったフランジ(継手)のガスケット(漏れ防止のシール材)は塩酸によって犠牲陽極(本体の代わりに腐食させる金属)が溶け出して、ガスケットの止水機能が損なわれたためとのこと。
1~6号機
◎日報に新規事項の記載なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・1号機ディーゼル発電機(B)室、1号機所内ボイラー室の滞留水を1号機タービン建屋地下へ断続的に移送実施中
・1号機原子炉建屋地下から集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中
◆2号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・増設廃棄物地下貯蔵設備建屋の廃樹脂貯蔵タンクエリア、廃スラッジ貯蔵タンクエリアの滞留水を、2号機廃棄物処理建屋へ断続的に移送実施中
・2号機タービン建屋地下から集中廃棄物処理施設へ高濃度滞留水を断続的に移送実施中
◆3号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・増設廃棄物地下貯蔵設備建屋の廃樹脂貯蔵タンクエリア、廃スラッジ貯蔵タンクエリアの滞留水を、3号機廃棄物処理建屋へ断続的に移送実施中
・FSTR建屋から3号機廃棄物処理建屋の滞留水移送については断続的に移送実施中
・3号機タービン建屋地下から集中廃棄物処理施設へ高濃度滞留水を断続的に移送実施中
◆4号機
・原子炉内に燃料なし
・2014年12月22日、使用済燃料プールに保管されていた全ての燃料の移動作業が終了
◆5号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・6号機使用済燃料プール冷却系の除熱系統である6号機補機冷却海水系について、ストレーナ他点検のため、4月11日午前10時31分に、6号機使用済燃料プール冷却系を停止し、午前10時49分に残留熱除去系(A)系の非常時熱負荷モードを起動し、使用済燃料プール冷却を開始。6号機補機冷却海水系については、午前11時22分に停止。(停止予定期間4月11日から4月22日)
なお、切り替え前のプール水温度は21.8℃、切り替え後のプール水温度は22.0℃であり、運転上の制限値(65℃)以下となっている。