世界には数え切れないほどの岬や半島があるものの、名称を聞いただけでイメージが膨らみ、惹きつけられる場所は数少ないかもしれません。南アフリカにある喜望峰はそのひとつではないでしょうか。その名を耳にするだけで、見たこともない大航海時代に思いを馳せてしまいます。
初めてのアフリカ大陸
ブエノスアイレスから乗ったマレーシア航空は南アフリカ・ケープタウンの国際空港に着陸。誘導路をゆっくりと地上走行すると、駐機場に停止しました。そのまましばらく機内で待っているとタラップの取り付け作業が終り、機体のドアが開きます。いよいよアフリカ大陸です。タラップの上に立った時に見た人生初のアフリカの景色は今でも覚えています。階段を降りて第一歩を記した時、ついにアフリカに来たんだという思いが込み上げてきました。
空港からケープタウンの中心エリアまではおよそ20キロほどあります。車で街へ移動すると泊まる所を探しました。そして、1軒の安宿にチェックイン。部屋はドミトリー(相部屋)です。旅行に出る前、アフリカの物価は安いというイメージがあったのですが、南アフリカは別でした。ドミトリー1泊の値段で、南米のボリビアならばシングルルームに2、3泊できそうです。旅の途中で話に聞いてはいたものの、想像以上の料金にびっくりです。
ケープポイントから喜望峰へ
ケープタウンには3泊しました。ここでの一番の目的はなんと言っても「喜望峰」です!南アフリカに来て、ここへ行かないわけにいきません。なんと言ってもこの岬は、中学、高校の頃から心の何処かに憧れの地としてあった場所なのですから。
喜望峰はケープタウンがあるケープ半島の先端にあります。ただ、そこまでの公共交通機関はないという話でした。そこで、日帰りツアーに申し込んで行きました。
ツアーは10人前後が乗れるバンを利用します。ケープタウンの街を出発すると途中、いくつかの観光スポットに寄りながら、ケープポイントにある展望台、ルックアウトポイントへ行ったのです。(※途中の観光スポットは別にご紹介します!)
ケープポイントは喜望峰のすぐ南にある岬で、ルックアウトポイントはその小高い丘の上にあります。展望台は元灯台が建てられていた場所だけに見晴らしは抜群です。ここから、憧れの喜望峰の絶景を見ることができます。エメラルドグリーンの海に突き出す姿は期待以上の光景でした。
ルックアウトポイントには、ニューヨーク、ベルリン、リオデジャネイロなどといった世界各地の主な都市の方向とそこまでの距離を示した標識が建てられています。その中のひとつに「TOKYO」の文字を見つけると、標識が示す先にいる友人や家族の顔が思い浮かびました。
ルックアウトポイントからの絶景を目に焼き付けると、いよいよ歴史的な岬へ。展望台からは約2キロの道のりです。
小高い丘から続く斜面を30分ほど歩き、下りきった所に「CAPE OF GOOD HOPE」と書かれた看板がありました。喜望峰です!
学生の頃、教科書の中だけの遠い世界だと思っていた場所に立っているのです。感慨を覚えずにはいられません。
喜望峰の前には海が広がっていました。右手は大西洋。左手はインド洋です。そして、その間の先には南極大陸があります。実際に極地の大地を目にすることはもちろんできませんが、少し前に訪れた氷の大地のことが思い出されました。
15世紀、今よりもはるかに命を落とす危険性の高かった時代の航海者たちは、この岬をどのような思いで見ていたのでしょうか。喜望峰は発見当初、「嵐の岬」と名付けられたそうです。それが今の名に改められたのは、インドへとつながる新航路発見への希望とも、新しい航路を開拓した記念とも言われています。もし、最初につけられた名前のままだったならば、また違ったイメージでこの岬を見ていることになるのだろうか。そんなことなどを考えてしまいます。
南アフリカの喜望峰。実際の大陸最南端は東へ150キロほど行った場所にありますが、「ここが最南端ではないだろうか」。なぜかそのように思わせてしまう風格のようなものを感じた岬です。