宮城県南三陸町歌津にある伊里前(いさとまえ)福幸商店街にかさ上げ工事の土の山が迫っていた。仮設商店街の屋根よりもはるかに高い、大きな大きな土の山。商店街はどうなってしまうんだろうと思ってたら、知り合いの建築士さんに偶然出会った。
「久しぶりです!」と声を掛けると、彼はなぜかちょっと落ち着きがなくて、なんだかとても忙しげな感じ。断片的な会話から、国道の海側のかさ上げが終わった場所に仮設商店街として移設するということらしい。忙しそうにしている理由は、まさにその工事に関わっているから。
「で、移転予定はいつ頃なんですか?」
「ほら、ぜったいその話になると思った。それは聞かないで~」
落ち着いたらまた今度ねと言うと、彼は内装材のサンプル帳を小脇に、仮設商店街のお店に打ち合わせに飛び込んでいった。
かさ上げで仮設商店街がなくなって、代わりに本設の店を出すという計画はあちこちで聞くが、歌津エリアの復興工事は昨年からようやく本格化してきた感じ。それだから仮設から仮設への商店街のリニューアルが行われるのだろう。それだから、できるだけ早く新店舗をオープンさせなきゃならないのだろう。
かさ上げ工事で土地の姿がめまぐるしく変わっていく南三陸町では、以前にあったコンビニやお店がかさ上げで無くなってしまうことが頻繁にある。あてにして走っていて、「あれ、道が変わって店がない」となると、お客としても困るものだが、お店のオーナーさんたちはもっと大変なはず。仮設商店街を閉じた後、本設店舗として再出発するまでのタイムラグを不安視する話はよく耳にする。客離れを避けるためにもできるだけ商売にタイムラグをつくりたくない。
建築士さんが大車輪の忙しさでフル稼働して、おしゃべりすらままならないくらいなのはきっとそんな事情があるからなのだろう。
正月明けに伊里前を走っていたら、新設されている商店街にいくつか灯りがともっていた。もうオープンしたお店があるのかなと、かさ上げされた道路を上って駐車場に入ると、店舗はまだオープン準備中。でも、海を見下ろす新しい商店街の未来の容貌が一瞬見えたような気がした。
駐車場の向こうはすぐに海だ。もしかしたら、日本で一番海に近い商店街になるのかもしれない。オープン予定の看板は出されていなかったが、その後の情報では2月7日がグランドオープンなのだとか。(各店舗は1月中に順次移転とのこと)
日本中からたくさんの人が訪れてきた伊里前福幸商店街。リニューアルオープン後にも多くの人たちで賑わいますように。
以前の敷地はすぐにかさ上げ工事が入って、土地の印象が一変してしまうだろうから、お越しの際は通り過ぎないようにご注意を。新しい伊里前福幸商店街は伊里前の港に面した海沿いです。