特定原子力施設放射性廃棄物規制検討会(第1回)に関連して、事故原発構内のがれきや、汚染水処理によって発生する吸着塔や沈殿物などの保管や焼却、減容に関する資料が公開されている。いま原発では汚染水の問題が注目を集めているが、固体の廃棄物の処理や保管が、廃炉に向けて大きな課題となることが改めて明らかになった。
事故原発構内がれき等の汚染物質の分析
まずは事故原発構内の状況を知るため、「瓦礫等および水処理二次廃棄物の分析状況」を見ていこう。
この資料では固体の廃棄物として発生するがれき等を、フォールアウトの影響を受けたもの、水処理二次廃棄物、解体廃棄物に分けて調べている。フォールアウトとは原発の爆発などで放出・降下した放射性物質のこと。日本語では「死の灰」と呼ばれることもある。土壌やがれき、立木など、多くのものが汚染された。水処理二次廃棄物は、汚染水処理で発生するスラリーやスラッジ(泥状の沈殿物)、フィルターなど。「検出できない核種の評価が課題」と、今さらながら恐ろしいテーマが掲げられている。解体廃棄物は文字通り建屋などを解体した際に出る廃棄物。当然のことながら極めて高い濃度で汚染されている。
フォールアウトの影響は原発構内を20カ所に分けて、立木や落ち葉、土壌などを対象に測定されている。
セシウム-137もストロンチウム-90も、建屋周辺では極めて高い濃度だ。この資料で見る限り、建屋周辺以外、正門や関連企業の施設などが建設されている西側高台は、かなり低い結果となっている。しかし、タンクが立ち並ぶ「K」のエリアはストロンチウム-90の値が、1kgあたりに換算すると1,000ベクレルを超える高さだ。フォールアウトの他に高濃度汚染水が漏洩した影響も考えられるかもしれない。
立木の枝葉より落ち葉や土壌の方が濃度が高いというのは、原発事故で汚染された周辺地域の農地や山林などで確認されているのと同様の結果。立木から地表へ移行した放射性物質がその後どのように動くのか、先進的な分析・研究を期待したい。
また、以前から懸念されていたプルトニウムの放出に関しては、あっさりと認定。Dエリアの落ち葉から検出されたものが事故によるものだと推定されている。しかし、原子炉内にしかないはずのプルトニウムがなぜ建屋外に存在するのか、その理由についての考察は見られなかった。
汚染水の水処理によって発生する廃棄物は、処理を行うほぼすべての施設から排出されるだけに、膨大な量になる。この廃棄物は汚染水に含まれる放射性核種が凝縮されているため濃度も高い。資料に掲載された数値を1kgあたりに換算すると、10万ベクレルオーダー(セシウム-137など)から100億ベクレルオーダー(ストロンチウム-90)ととてつもない数値だ。
しかも施設によって処理する核種が異なるため、保管などの対応も複雑になることが予想される。
建屋などの解体によって発生する廃棄物は、今後どんどん増加していく。東京電力ではコンクリートがれきなどの一部、汚染度が低いものは再利用も検討しているが、線量管理を厳格に行わなければ、二次被曝、三次被曝が継続するリスクもある。
放射線量の高いがれきは当然、しっかりした管理が求められる。固体廃棄物を保管するためには、膨大な面積の敷地が必要とされるだろう。ただでさけ汚染水等のタンクが林立する原発敷地内では、用地確保も難しいかもしれない。しかし、だからといって減容を追求するあまり、再利用するがれきの線量管理が疎かになることは許されない。
がれき等はどのように分別・保管されるのか
続いて、がれき等の管理がどのように行われているのか、「瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況」を中心に見てみよう。
がれきも水処理によって発生する廃棄物も、「一時保管」→「保管」の流れで貯蔵されることになる。ただしいずれも本格的な保管はまだ行われていない。がれきの場合は、発生場所から一時保管場所へ運ぶ前に、仮設集積される場合がある。また、先にも触れたがコンクリートなどのがれきは再利用されることもあり、こちらはすでに一部で実施されている。
がれきはその発生元により「がれき」と「伐採木」、「使用済み保護衣等」に分けられる。がれきは線量によってエリアと保管形態を分けて管理される。
ここで注目したいのは、ひとつ前の画像で示されていた「仮設集積」だ。一時保管施設に運び込まれる前のがれきに対しては、保管のための分別が行われているのかどうか。わざわざ仮設集積と別記していることから、少なくとも一時保管施設よりはラフな形で保管されているものと考えられる。
仮設集積されたがれきは今後、土壌と土壌以外の物、コンクリートと鉄筋など、物の種類による分別と合わせて線量による分別が行われることになるのだろ。
事故原発構内で発生する固体の廃棄物は汚染されているので、通常のがれき処理のようにまとめて粉砕したり焼却することはできない。極めて面倒な作業が今後待ち構えていると言っていい。
がれきの一時保管エリアは原発敷地内の広い範囲に点在している。10月31日の時点では、まだ保管の容量には余裕があるように見える。続いて下は仮設集積場所と保管量を示す資料。
集積されている量は、一時保管にくらべてはるかに少ないが、原発敷地内のさまざまなな場所に点在していることがわかる。一時保管エリアに運び出すことができず、とりあえず集積しているという形だろうか。