次に保管形態と分別について見てみよう。保管形態は線量に応じて分別されていたが、この分類ではがれきの種類別に表示されている。「被曝を考慮して可能な範囲で」という但し書きが恐ろしい。
この分類から現場での作業を推測してみる。まずがれき表面の空間線量を測定し、毎時0.1ミリシーベルト以下(100マイクロシーベルト)であれば、金属やコンクリート、土砂、可燃物などに分別。0.1ミリシーベルトから1ミリシーベルトまでのものは、「土砂以外は混載」とあるので、実質的にはスケルトン(ふるい状のバケット)を装着した重機等で土砂だけを分けるといった作業になるのだろう。1ミリシーベルトから10ミリシーベルト(100分の1シーベルト)のがれきは、ほぼ分別は行わないのではないだろうか。作業員の被曝限度が累積で100ミリシーベルトであることを考えると、1ミリシーベルトを超えるようながれきの人力による分別は現実的ではないと思われる。
がれきの一時保管エリアの状況
線量による分別でもっとも低いレベルの廃棄物。左上の写真ではトン袋(フレコンバック)に入れられたがれきが積み上げられている。内容物が何なのかは分からない。右上は重機にハサミ状のアタッチメントが着けられているように見えるので、この場所でコンクリートがれき等の破砕や鉄筋との分別が行われているのかもしれない。
説明文にある「バックグラウンド線量」とは、建屋や施設、地表等から放射されている線量。原発敷地内で特別な汚染源がなくても通常検出される空間線量と考えていい。そのレベルのがれきであれば、特別に保管する意味が薄いため、破砕して路盤材(道路等の基礎として、アスファルトやセメントの舗装の下に入れる砕石類)として再利用しているということ。
0.1ミリシーベルトから1ミリシーベルトまでのがれき保管は様相が一変する。屋外集積は文字通り廃棄物を野積みしている状態だったが、ここでは飛散を防ぐため養生が施されている。進捗は示されていないが容器保管を進めるとも記されている。
1ミリシーベルトから10ミリシーベルトのがれきは、金属製容器による保管が必須となる。それでも腐食による漏洩などの恐れもあるので、定期的な点検が不可欠だろう。
毎時30ミリシーベルト以下のがれきは覆土式で一時保管される。仮設保管設備は屋根シートが破損する事故が発生しているため、覆土式が主流になるような書き方だ。
覆土式は地面を掘り下げ、遮水シートやベントナイト(止水のための粘土)で遮水した上にがれきを保管。さらに保護シートや放射線を遮蔽するための土などを盛る構造になっている。当然のことながら、雨水等が汚染して流出したり、地下水が汚染されたりすることがないよう、周辺地下水のサンプリングも実施するとしている。
2013年3月に完成し、現在利用されている第1槽、第2槽では溜り水の発生が報告されている。溜り水の量は合計60トンほどで、セシウム-137が1リットル中1,000ベクレル程度含まれているという。溜り水は槽内観測孔から汲み上げ、汚染水処理設備等で処理するとしている。
毎時30ミリシーベルトを超える汚染度の高いがれきは、金属容器に入れた上、鉄筋コンクリート造の固体廃棄物貯蔵庫で保管される。
現在3棟で貯蔵されているが、新規の貯蔵庫建設も進められている。
伐採木や保護衣等の一時保管
伐採木の保管には火災のリスクがつきまとう。被災地のがれき集積場でも、火の気がないのに湯気やガスが発生したり、実際に発火する事例も起きている。木材が発酵する時の熱で自然発火してしまうのだという。
ガス抜き管や温度計、さらに酸素を遮断する構造で対処とのことだが、火災発生時の対応については記されていない。
タイベック(カバーオール)などの保護衣は、現場で作業を行う都度発生する厄介な廃棄物だ。現在は分別後、ドラム缶や金属容器で保管されているが、新設の雑固体廃棄物焼却設備の完成後は順次焼却を進め、廃棄物の減容を進めるとのこと。
水処理で生じる廃棄物の保管
吸着塔で回収された放射性物質は、吸着塔ユニットのまま保管。その際、吸着塔の種類によってラック、ボックスカルバート(コンクリート製の箱)、HIC(高性能容器)対応のボックスカルバートで保管される。廃スラッジはコンクリート製、あるいは鋼製のタンクで、また濃縮廃液は溶接タンクに移送して保管するとしている。