K排水路の現状と大規模な本設工事

サブドレン・地下水ドレンとの整合性はあるのか?

「2015/10/22(木) 現在のK排水路対策の状況(C排水路への汲み上げ)」映像|写真・映像ライブラリー|東京電力

東京電力が10月22日に公開した動画「現在のK排水路対策の状況」には、これまで明瞭な形で公開されることがなかったK排水路の現状が映し出されている。

以下、動画のキャプチャーを使って解説する。

現在のK排水路排水口付近の状況をイラストで示す最初の画面。カメラ位置の矢印が実際と異なっている。矢印は陸側から撮影したように示されているが、明らかに海側から排水路を見る方向で撮影は行われている。

海岸沿いからK排水路の排水口を北方向に見た映像。右下の黒い配管は地下水バイパスの排水路。左上のグレーの配管は、K排水路の排水口に設置された堰から、水を汲み上げてC排水路へ送るライン。

K排水路排水口。直立するパイプはK排水路から水を汲み上げるポンプとパイプ。手前に見える黒パイプが地下水バイパスの排水口。間にある板状がK排水路の堰。ずいぶん低い堰だ。堰を越えて汚染された雨水が海に流れ出す事故が繰り返されたが、この堰の低さではと納得してしまう。

ポンプ部分のアップ。縦に汲み上げられたK排水路の水は、C排水路にそって逆流する方向に移送される。ポンプを動かす発電装置が1基だけだったためポンプが停止して越水という事故も発生したが、現在はどうなのだろうか。

C排水路を囲むように、ポンプに直結したパイプが走る。C排水路の水の流れは左から右方向だが、ポンプアップされた水は逆の上流側に送られる。

K排水路から汲み上げられ、移送された水はC排水路途中に設置された枡に流され、ここからC排水路の水と同様に港湾内へ排水される。

動画の後半は現在進められているK排水路の本設工事の紹介だ。さきほどの枡の近くと思われる場所に大きな立坑が建設されている。

立坑の中には大きな円筒形のマシン。胴体に「2200型泥土圧式掘進機」と書き込まれている。泥土圧式掘進機とはシールドマシンと同様に地中に断面が円形のトンネルを掘り進める装置。先端のビットで土を掘り進め、掘ったところにヒューム管(コンクリート製の管)を設置して連続するトンネルを建設する。これが上流からC排水路の枡に直結する水路として新設されている。

掘進機とシールドマシンの違いは、自力で掘進するのではなく、立坑内から推進管で押し込みながら前進する掘進機である点らしい。ヒューム管の奥にある掘進機からは、掘削した土が泥になってコンベアで排出されている。

事故原発の過酷な環境の中、かなり大規模な工事が進められている一例だ。

K排水路工事のそもそもの目的は?

動画後半のトンネル掘削工事は、K排水路を付け替えるための本設工事だ。堰こそ設けられているものの越水すれば太平洋に直接流れ出てしまうK排水路の排水を、C排水路に直結するというのが工事の内容だ。

太平洋へ直接流れ出る状況が変わるのはいいことのようにも見えるが、ここにそもそもの問題がある。C排水路の水はそのまま直接、港湾内の南側に排水されるのだ。

この動画に登場するC排水路にはB排水路とともにタンクエリアのある高台からの排水が集まってくる。この排水路では今年(2015年)2月22日に全ベータが最高7000ベクレル超の汚染水が流れて警報が発生する事態が起きた。また、原子炉建屋近傍からの側溝などの排水が集まるK排水路では、C排水路での警報発生の2日後、建屋に付属する施設の屋上に溜まっていた全ベータが5万ベクレル超、セシウム-137も2万ベクレル超の汚染水が流れ出していたことが明らかになった。

とくにK排水路で放射能濃度が上昇することを東京電力は以前から認識しており、約10カ月もの長きにわたって公表されなかったことも発覚。これに地元漁業関係者が強く反発する。

当時、サブドレンから汲み上げた水を処理した後に海洋に排出する「サブドレン・地下水ドレン計画」が実施に向けての最終段階にあったが、信頼関係が損ねられたとして漁業関係者は交渉を打ち切り、東京電力はサブドレン計画を実施できない窮地に追い込まれてしまったのだ。