原発建屋から今も大気中に放出される放射性物質

建屋内部の線量が極めて高く、作業員が容易に近づけないほどの2号機では、建屋側面のブローアウトパネルという大きな開口部からの放出が問題です。原発事故で外れたブローアウトパネルは、2013年3月11日に閉止パネルで塞がれましたが、開口部の一部に設置された排気設備経由の放出と、パネルの隙間からの漏洩が続いていることが発表された資料から確認できます。

排気設備経由での流量は1時間あたり10,000立方メートル。
ブローアウトパネルの隙間からは1時間あたり9,886立方メートルと、ほぼ同じ量が大気中に流失していることを示す数字になっています。

セシウム134と137の合計値は、毎時「30,000ベクレル」未満との評価でした。

3号機

「原子炉建屋からの追加的放出量の評価結果(2015年7月)|東京電力 平成27年8月12日」

オペレーションフロア上や使用済み核燃料プールでのガレキ撤去が進められている3号機は、カバー開放後の1号機と同様の対象について評価が行われています。

つまり、原子炉直上部と機器ハッチ、そしてガス管理システムからの放出です。原子炉直上部での漏洩率は、2015年7月1日現在の崩壊熱から、1時間あたり288立方メートルの蒸気が発生し、それによって大気中への放射性物質の放出があるとの評価でした。

セシウム134と137の合計値は、毎時「57,000ベクレル」未満とのことです。

4号機

「原子炉建屋からの追加的放出量の評価結果(2015年7月)|東京電力 平成27年8月12日」

使用済核燃料プールからの燃料取り出しが完了した4号機には、燃料取り出し時に設置されたカバーで建屋上部が覆われているためか、カバー隙間からの放出とカバー内の排気設備からの放出が評価されました。

意外な評価値

4号機のセシウム134とセシウム137の合計値は、毎時「60,000ベクレル」未満との評価でした。1~4号機の中ではもっとも線量が低いとされ、いち早くガレキ撤去や燃料取り出しが行われた4号機ですが、今回の評価ではカバー設置中の1号機に次ぐ放出量となっています。

ダストの測定を行っている場所や測定カ所の数に問題があるのかもしれません。

カバーの有無によって測定値の確からしさが変化する可能性もあるかもしれません。

風速や風向といった測定に誤差が生じてしまいがちな物理量を元に計算するため、評価の確からしさには自ずと限界があるということなのかもしれません。

しかし、これがおそらく現在の事故原発の現場で行いうる最善の「追加的放出量評価」なのでしょう。であれば、よりばらつきの少ない評価方法の検討を進めるとともに、新たな基準や手法による評価や計測が実行可能な状況になった後にも、現状と同じ手法による評価を継続してもらいたいと思います。

原子炉建屋から今も続く放射性物質の大気への拡散は、長期的なトレンドとしてとらえることが重要です。大きな変化を見るためには、測定方法や評価手法が頻繁に変更されるのは大変具合が悪いことです。今後40年続く廃炉作業の長い時間を念頭に置いたデータの蓄積と評価の公表を続けてほしいと願います。

たとえば現在30代の働き盛りの方も、40年後には70代。廃炉作業の主役が若者たちになることは間違いありません。今はまだ社会人にもなっていない若手たちが作業を安全に継続していけるような、未来への配慮を望む次第です。