とにかく勇壮な祭りです。山道を越えてきたお神輿は海へ。海中で大きく何度も躍動した後、再び山を越えて神社へ。
しかし神社の前には猿田彦之命や祭りの年寄り役が待ち構えていて、すぐには神社に入れてもらえません。お神輿は何度も行ったり来たり。方々から水が掛けられて――。
昔ながらの町並みにお神輿が躍る
そしてお神輿は海へ――
出発前にはね、区長さんは言っていたんです。今年は波もあるから海には入れねえ。
そうは言っても、お神輿が渡御する道のりに海があるんだから、入るなと言われても入らずにはいられない。面白いことに区長さん、こうも言うんです。むかしは3カ所で海に入ったもんだと。危ないから入らないと止めながらも、先輩から受け継がれてきたもの。海のお神輿は毎年積み重ねられていく集落の歴史でもあるんです。
とても勇ましいのですが、担ぎ手たちの喘ぎも聞こえてくるような…
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久之浜 三嶋神社の夏祭り 神輿は今年も海へ
そして再び山道を越えて
旙(はた)を2本立ててベビーカーを押すお母さんがいいでしょ。旙は子供たちが1人1本持って歩くことになっているので、ベビーカーの中の子と、背中で寝ている子それぞれの分なのです。観客はほとんどいないけれど、地域の人たちがみんなで参加しているのです。
緑の中をゆくお神輿もなかなかイイのです
お神輿の後を歩きながら、神官の高木優美(まさはる)さんが教えてくれました。
お祭りとしてはこれ以上コンパクトな形はないでしょう。でも、全員がこの地域の人達なんですよ。
緑の中、優美さんの言葉が伸びやかに広がっていきます。いい祭りだなぁ
神社の入り口に戻ってきたら水の洗礼
同じ地元の仲間だからこそこの表情。この息の合った練り。
津波の前にはもっとたくさん家があって、もっとあちこちから水が掛けられていたんですよ。でも、お神輿の担ぎ手は震災前よりも増えたくらいです。みんなこの集落の人たちですよ。外からの担ぎ手は1人もいません。みんなで盛り上げようという気持ちが、小さな集落だけに強いんですよ。
お神輿の後をついて歩きながら、高木美郎宮司や優美さんに教えていただいた言葉が、すっと心の中に入ってきて、爽やかに広がっていくのを感じました。
ここは久之浜の田野網地区。海と山に挟まれた小さな集落です。
帰りに地域の区長さんから「うちのお祭りは海の日の三連休の1日目と2日目だから」と教えられて。つまり、また来いということで。そんな言葉がうれしいお祭りでした。