できたの、どうなの?トレンチ充填完了の「クエスチョン」

いったい何が完了したのか、トレンチ問題の対策工事は終わったのか終わってないのか?

・2号機海水配水管トレンチのグラウト充填工事については、当該工事に伴い実施していた2号機海水配管トレンチ内滞留水の移送(残水処理除く)が2015年6月30日に完了した以降も、継続してグラウト充填作業を行っていたが、同年7月10日に当該作業が完了した。今後、海水配管トレンチ内の残水処理等を継続して実施していく。

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成27年7月11日

これ読んで意味がわかる人がいたら教えを仰ぎたいものだ。

海水排水管トレンチとは、タービン建屋と海側をつなぐ配管・排水などのための地下トンネル。原発事故時には津波の海水や、原子炉建屋・タービン建屋からの高濃度汚染水が流れ込んで、高濃度汚染水が漏れ出す元凶のひとつとして目されてきた施設。この地下トンネルを埋めることは、汚染水が海へ漏れ出すことを防ぐ重要な工事として急がれてきた。(その過程で、トレンチとタービン建屋の連絡部分を凍結止水しようとして失敗し続けたのも記憶に新しい)

さて、冒頭の東京電力による発表に戻ろう。正直言って文章すべてが意味不明。

まず、「2号機海水配管トレンチ内滞留水の移送(残水処理除く)」とは何だろう?
滞留水と残水、溜まり水と残り水。この二つ、いったい何がどう違うのか。

滞留水移送が6月末に終わった後もグラウト充填作業を継続とあるのは、グラウト材を充填していくことで、溜まっている(あるいは残っている?)汚染水を押しやっていくということだろうか。(水中コンクリートの打設でも、専用のパイプを使って同様の工事は行われる)

そして、もっとも難解なのは、「当該作業(グラウト充填作業を示している以外考えられない)が完了。今後残水処理等を継続していく」という結論だ。完了したのに継続とはこれ如何に? 終わったのはグラウト充填だけで、トレンチ対策が完了したのかどうかはまったく分からない。

充填できたのは4つの立坑のうちの陸側2本のみ

同日付の東京電力の資料を見て、おぼろげながらわかってきた。

「福島第一原子力発電所2号機海水配管トレンチ内の充填完了について|東京電力 平成27年7月11日」より
上記の展開図部分の拡大

この資料からは、AからDまで4つの立坑のうち、建屋に接しているAとDの2つについては、「O.P.」と記された基準海水面のプラス4mまで充填が終わっているが、海側のB,C2つについて充填は完了しておらず、それぞれ水位は基準海水面からBで1.7m、Cで0.9mの汚染水水位があることが読み取れる。

つまり、完了したのはAとDの立坑の充填だけであって、海側のB,Cの立坑はまだ水、要するに汚染水が残っている。立坑Bでは引き続き「残水」という名の汚染水処理を進めるが、立坑Bは事故直後の汚染水漏れを受けてコンクリートで閉塞した場所。けっきょくこの場所の処置が悪かったから、完全に充填出来ないということなのかもしれないが、そこまで詳しくはこの資料からは読み取れない。

また黒線で囲まれた「閉塞部分」は立坑だけで、立坑部分よりもはるかに容積の大きな地下トンネル部分の閉塞がうまくいっているのかどうかは、資料に記されていない。ちゃんと埋まったのかどうなのか。完全に充填されていなければ、隙間から地下水などが入って、放射性物質を溶かしだすといった現象の発生も考えられる。より詳細な説明が待たれるところだ。

(そもそも完全に閉塞できたかどうかを確かめることは不可能だ。グラウト材で埋めているのだから立ち入ることなど出来ないからだ。充填できたかを確かめるには、トレンチを掘り出して外からチェックするという非現実的な方法しかない。要するに、目に見える立坑を塞いだだけ。計画段階から臭い物に蓋というダークな発想だったとしたら、とんでもないことだ)

関連してひとつ注目したいのは、立坑Cについて、「今後、観測孔として使用」とある点だ。当初から観測孔として使おうと考えていたものなのか、急遽そういうことになったのか、これも気になるところだ。