箱根火山が「やっぱり噴火でした」とされた日

小規模とはいえ、20kmも離れていない山で噴火が始まったのだから、早めに退社して外に出ると上空にヘリがバタバタとあの独特の轟音を立てて上空を飛び回っていた。

マスコミのヘリが箱根の遠景を撮影しているんだろうと思っていたが、ほぼホバリングした状態で三島駅の上空から少しずつ海の方へと移動していく。その移動速度はほとんど徒歩と一緒。曇りの日だったから少しずつ辺りも暗くなりはじめてくる。

もしかしたら、箱根の上空を撮影しに飛んできたものの、山体が雲に覆われていて撮影できないから、薄暗がりになって火映現象(火口の熱で上空の噴煙や雲などが赤く光る現象)の撮影に切り替えて、その時をホバリングしながら待っていたのかもしれない。しかし、折しも三島では雨が降り出したので、ヘリは西の空へと去っていった。

彼らは噴火を待っているんだろうなあと思った。なんで火口から20kmも離れたところで待機しようとしていたのかっていうと、やっぱり突然の爆発が恐いんだろうな。そんなことも思った。

どこの新聞社、あるいはテレビ局のヘリかは分からなかったけれど、火映や噴火の瞬間を待ち構えているカメラマンが所属する社では、「風評被害」のことを放送ではしゃべっていないとも限らない。「立入り禁止区域はほんの半径1kmに過ぎず、箱根は広いから安全です」という空疎なメッセージを。

東日本大震災で、命がかかった震災後数日の間、低空でホバリングを続けるヘリに地元の人たちが地上から叫んだという話を思い出した。「うるせー、おめら救助に来ねえなら、どっか行け!瓦礫の中で助け求めてる人の声が聞こえねえだろうが!」

その時、その声が聞こえなかったとはいえ、マスコミの映像を通して被災地の地獄絵図を見ていた自分たちが同じ罪から逃れ得ないということを、じわりと災害の足音が近づいてくる町で感じている。