津波は海で発生するもの。そのように思われがちかもしれませんが、先日、次のような新聞記事を目にしました。6月25日付、神奈川新聞社のものです。
東日本大震災発生時の地震波で震源から450キロメートルほど離れた箱根町・芦ノ湖の湖面が波打ち、水位が最大で約20センチ変動していたことが県温泉地学研究所の解析で分かった。「静振(せいし)」と呼ばれる現象で、影響は20時間ほど続いていた。原田昌武主任研究員は「より近い場所で大地震が起きれば、水位変動はさらに大きくなる。津波のように陸地に及ぶ恐れもある」と注意を促している。
震源から450kmも離れた神奈川県の箱根という距離もさることながら、「湖」で20cmの水位変動があったことに驚きます。
通常、海で発生すると思いがちの津波ですが、湖でも発生する危険性があります。
琵琶湖で津波が発生していた?
昨年の3月のことになりますが、琵琶湖で津波が発生する可能性について、滋賀県防災危機管理局が次のような報告書を公表しています。
報告書によると、発生確率は低いものの、琵琶湖で最大4.9m(※沖島)の津波が押し寄せる可能性があると指摘しています。津波到達までの時間は5~10分ほどとなっています。
また、琵琶湖の畔に位置する長浜市では、平安時代後期に津波があった可能性を示す痕跡が実際に見つかっているそうです。
湖でも発生する山体崩壊による津波について
地震波や湖底断層以外の原因により、津波が発生することもあります。なかでも可能性が高く、恐ろしいのが山体崩壊(※土砂崩れ)によるものです。
これは地震や火山噴火の際、山腹の一部が崩れて湖に流れこむことにより津波が起こります。以前、ぽたるページでもご紹介しましたが、観測史上最も高い津波は山体崩壊によって生じています。
この津波は1958年7月9日、米国・アラスカ州のリツヤ湾で発生したものです。地震により大量の土砂が崩れて湾内に落ち、500m以上の巨大津波が観測されています。この数字は山腹を駆け上った波の高さではあるものの、想像もつかないほどの大きさとパワーを持った津波が山体崩壊で発生する可能性があります。
日本でも1792年、火山活動による地震で土砂が有明海に流れこみ、20mを超す大津波が発生して1万5千人もの方が犠牲になっています。
これらは湾での事例ですが、発生原理は同じであり、湖でも同様のことが起こる可能性があります。実際、スイスにあるジュネーブ湖では、6世紀、土砂崩れによって13mもの高さの津波が湖畔の街を襲っています。
湖でも地震発生時は高台へ
国土の約7割が山地と言われる日本。この国にある天然の湖は、火山活動や地震などによって山間の川が堰き止められてできたものが数多くあります。当然、それらの多くの湖岸には山が迫っています。そして、湖の周りには住宅や別荘が建てられ、観光地として多くの人で賑わっている場所も少なくありません。
地震発生時の津波について、海岸での危険性についてはよく知られているものの、湖岸については海ほど認識されていないようにも感じます。
湖だから津波に対しては安全ということはありません。むしろ、到達するまでの時間の短さや危険性に対しての認知度の低さも考えると、湖での津波は時に海以上に怖いものかもしれません。
地震発生時、岸辺から離れた高台に逃げるのは海でも湖でも同じです。
参考WEBサイト
Text:sKenji