前回の島旅レポート
実は、大杉への入口は別の場所にあった
青ヶ島の最終日。朝起きるとポツポツと何やらテントにあたる音がする。この日は八丈島へ戻る日。嫌な予感がした。外に出てみるとどんよりとした雲がかかり、ときおり雨がぱらついていた。
八丈島行の船は青ヶ島を13:10に出港。乗船券を買う必要があるのでキャンプ場を11:30には出発しなければならなかった。
船が出るまでの貴重な時間をどのように過ごすかを考えた。真っ先に頭をよぎったのが前日に断念した樹齢200年以上の大杉探索であった。
大杉を見つけられなかった日の夕方、道を歩いていると杉へ通じる山道の場所を教えてくれた男性とばったり会ったので、入り口についてもう一度確認をしてみた。すると、一緒にいた男性の彼女が驚きながら、
「それは古い道よ。今は全く別の所に入り口があるのよ!」と、危険な道を教えた男性を責めるように言った。
女性の話によると、現在使われている山道は聞いていた場所から1kmほど離れた所にあるとのことであった。
ふたたび大杉へ
大杉をもう一度探してみようか。地熱釜で蒸したジャガイモとレトルトご飯、そして朝、おすそわけでもらったエシャレットを食べながら考える。
その結果、リベンジをすることにした。トシ君はまだ寝ているようなので一人で行くことにする。
水など必要なものをサブザックに詰め、キャンプ場を出発する。
教えてもらっただいたいの場所へ行き、大杉への山道の入口があるというヤシの栽培園を見つけると、そこから森へと入った。
最初、道を示すリボンが見当たらなかったが、少し探してみると3mほどの高さの崖の下にピンク色のテープがつけられているのを発見した。岩をよじ登り、来た道を見失わないよう注意をしながら、次の目印がないか藪をこいで探す。
しかし、あたりを少し調べてみた結果、どう考えてもここではないという結論に達し、引き返した。
最初、森に入った地点へ戻りもう一度付近を調べる。
すると別のリポンを見つけたので、そこから再び森へと入った。今度は薮ではなく、地面が裂けてできたような崖の隙間の細い道を行く。
岩の裂け目の底を進む。ちょっとした探検気分。周りの崖や木にはオオタニワタリが着生しており、とても幻想的である。
しかし、この道も人が通ったような形跡は見当たらない。
結局、最初に森へ足を踏み入れてから40分ほど彷徨った後、それらしい道が見つからないので諦めて来た道を戻り、森を出た。
3度目の正直
道路に出て時計を見ると残り時間は少なかった。
大杉を諦めて丸山の裾野を一周してキャンプ場に戻ろうと思い歩いていると、前方から一台の軽トラックがやってきた。運転していたのは中高年の男性だった。だめもとで大杉の入り口を聞いてみる。すると、男性は一瞬躊躇した後に「迷うなよ」と笑いながら言って、山道の入口を教えてくれた。
男性に御礼を言って、森へ入る。
正真正銘の正規ルートは人が通った踏み跡がしっかりとあり、両脇の樹木には道を示す青いリポンが丁寧に結びつけられていた。
10分ほど歩くとオオタニワタリの群生が現れる。そして、その先に念願の大杉がすっと天を突くように立っていた。
杉は溶岩と溶岩の間に生えており、風格があった。その姿には神秘的なものを感じる。ただ、この場所がパワースポットと言われる所以は、大杉だけにあるのではなく、周りに生えるオオタニワタリや溶岩などの地形が生み出す、厳かな雰囲気によるところも大きいように感じた。
3度目の正直。最後まで諦めずに粘ってやっと出会えただけに感動と喜びはひとしおであった。
※大杉までの山道について
大杉への道について、わかりづらいのは山道の「入り口」です。道自体は人が通った踏み跡があり、道の両脇には青や赤などの目印がつけられている(※2015年5月上旬時点)ので、入る所さえ間違わなければ、迷う可能性は低いと思われます。地元の方に詳細な大杉への入口を聞いて森に入られた方がいいと思います。ちなみに私たちが青ヶ島に到着した日にあった遭難は、以前使われていた古い山道(私たちが最初迷った場所)で発生したそうです。
青ヶ島から八丈島へ
大杉を見た後、急いでキャンプ場へ戻る。そしてテントをたたみ、出発準備を整えると三宝港へと向かった。
港には地元の人や島にまだ残っている旅人が見送りに来ていた。すでに雨は止み、曇り空であった。欠航になるようなうねりはないように見えた。
待合所で待っているとまもなく「あおがしま丸」が現れる。
船が接岸すると、島で出会った人全員で記念撮影をしてからあおがしま丸に乗り込み、憧れだった島を後にした。
島旅の終わり。八丈島から東京・竹芝桟橋へ
八丈島に着くと、空きがあったので港近くの底土野営場でキャンプをする。
翌朝、朝食を食べて撤収準備を終えるとキャンプ場を出発して底土港へ向かった。