宇宙線を利用した原子炉透視調査で、核燃料のメルトスルーが確認される

核燃料がメルトスルーしていると考えられる1号機~3号機では、原子炉まわりの放射線量が高すぎて、人間の目視による調査が不可能な状態が続いており、ロボットによる探索調査も困難を極めている。そのためIRID(技術研究組合 国際廃炉研究開発機構)がKEK(大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構)と連携して進める透視調査による成果に期待が寄せられていた。

原子炉内を透視するには、宇宙線ミュオンを利用。地球の外部から大量に降り注いでいるミュオンには高い物質透過性があり、これを利用することでレントゲン写真で人体の内部を見るように、原子炉内に存在する物質を「密度の違い」で見ることができる。

東京電力は3月19日、報道配布資料として「原子炉内燃料デブリ検知技術の開発1号機測定結果速報」を発表。2月12日以降、3月10日までの26日分の測定データを元に行った評価内容が明らかになった。

「原子炉内燃料デブリ検知技術の開発1号機測定結果速報|東京電力 平成27年3月19日」より

○原子炉圧力容器内で、元々核燃料がセットされていた炉心部分には燃料の塊(1mを超えるような塊)は存在しない。

○原子炉圧力容器の炉心部には水は溜まっていない可能性が高い。

○使用済み燃料プール(SFP)には燃料があると推定される。

いずれも、これまで東京電力がパラメータなどから推定してきた状況にも合致する結果となったというが、つまり、1号機では炉心の燃料のほとんどが圧力容器を突き抜けており、格納容器の底か、あるいはさらに下まで達していることが明らかになったということだ。

調査はさらに継続して行われるという。多くの燃料が融け落ちたという結果が得られたことから、燃料デブリの位置と量の確認、デブリ取出し計画に反映すると東京電力は説明している。今後の焦点は燃料デブリが格納容器の底を通り抜け、基礎のコンクリートにまで破壊が及んでいるかどうか、融け落ちた核燃料の回収が可能かどうかに移ることになりそうだ。