免震どころか激震 東洋ゴム工業株式会社

対象物件が明らかになってきた

東洋ゴム工業(株)が製造した免震材料の大臣認定不適合等について

1.概要東洋ゴム工業(株)が製造した免震材料である「東洋ゴム工業製高減衰ゴム系積層ゴム支承」について、
①大臣認定の内容に適合しない製品を販売していたこと(大臣認定不適合)、②不正な申請書を提出し建築基準法に基づく性能評価・大臣認定を受けていたこと(大臣認定不正取得)が判明した旨、同社から国土交通省に報告がありましたので、お知らせいたします。

2.内容
①大臣認定不適合について
東洋ゴム工業(株)が平成15年から平成23年にかけて大臣認定を受けた免震材料について、地震の揺れを抑える能力が大臣認定品よりも低い製品(具体的には、等価粘性減衰定数・等価剛性の平均的な製造ばらつきが大臣認定で許容されていた基準値±10%を超えていた製品)を販売していました。
・現時点で大臣認定不適合が判明した棟数(調査中):55棟(販売された免震材料は2,052基)
・物件の所在地:宮城県5棟、福島県1棟、茨城県2棟、埼玉県3棟、東京都5棟、神奈川県6棟、新潟県1棟、長野県1棟、静岡県3棟、岐阜県2棟、愛知県6棟、三重県4棟、京都府1棟、大阪府2棟、香川県1棟、愛媛県2棟、高知県9棟、福岡県1棟
・物件の用途:共同住宅25棟、庁舎12棟、病院6棟、倉庫4棟、データセンター2棟、工場2棟、研究施設1棟、個人住宅1棟、事務所1棟、複合施設1棟
・物件の規模:15階建て以上のものが10棟程度(最大で30階建て)

②大臣認定不正取得について
東洋ゴム工業(株)が平成18年以降に免震材料の性能評価・大臣認定を申請するに当たって、上記①の大臣認定不適合製品が当該大臣認定
に適合する製品であるものとして製造実績を提出し、新たな性能評価・大臣認定を受けていました。
・不正取得が判明した大臣認定数:3件
・認定を受けた免震材料の名称:東洋ゴム工業製高減衰ゴム系積層ゴム支承

・認定番号:認定番号MVBR-0317(平成18年10月25日付け)
      認定番号MVBR-0343(平成19年4月26日付け)
      認定番号MVBR-0438(平成23年10月25日付け)
・指定性能評価機関:(一社)日本免震構造協会

引用元:平成27年3月13日付 国土交通省住宅局建築指導課・住宅生産課|プレスリリースより抜粋

18都道府県で55棟の対象物件のうち、読売新聞の取材で、以下の官公庁の庁舎、公共施設、病院なども対象物件であることが判明してきています。

茨城県  日立市消防本部庁舎
神奈川県 神奈川芸術劇場
長野県  長野市新庁舎・芸術館(建設中)
静岡県  御前崎市消防本部消防庁舎(建設中)
岐阜県  多治見砂防国道事務所
三重県  鳥羽警察署庁舎棟 県伊勢庁舎本館 県立志摩病院外来診療棟
京都   国立病院機構・舞鶴医療センター新病棟(建設中)
大阪   枚方寝屋川消防組合消防本部新庁舎
愛媛   県庁第一別館
高知   県庁本庁舎 安芸総合庁舎 高知東警察署 南国警察署(建設中)

引用元:免震不足、消防・病院でも…東洋ゴム改ざん : 社会 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

消防本部、警察、県庁など災害時にはそれぞれが災害対策の中心的な役割を担わなければならない「本丸(ほんまる)」となる建屋です。だからこそ高い費用をかけて免震構造にしているわけです。

東日本大震災の後で、日本中が次に起こりうる震災に対し、必死になって対策をしようとしている時にも、東洋ゴムは不良品(認定外)の免震装置を販売してきた訳です。
もし、免震装置の性能が原因で、建物が倒壊した時は、その建物の中にいる人以外に、隣接する建物や周囲に居合わせた人まで巻き込んでしまいます。県や市庁舎、病院、芸術劇場など、普段から一般市民が多く利用しています。これは殺人未遂や無差別テロ未遂に匹敵する事件だと思います。

民間のマンションについても、オーナーや住人だけの問題とは言い切れないため、すみやかに情報が開示されるべきだと思います。

安全性について「万が一」と言えちゃう神経

国土交通省における対応
(1)大臣認定の取消し
不正取得に係る免震材料の大臣認定3件については、本日付けで取り消しました。
(2)東洋ゴム工業(株)に対する指示
本日、東洋ゴム工業(株)に対して、次のことを指示しました。
①大臣認定不適合が判明した免震材料が設置された建築物の所有者に、その旨を早急に説明するとともに、当該建築物の設計者等の関係者と協力して、速やかに構造安全性の検証を実施し、その結果を国土交通省及び所轄の特定行政庁に報告すること。
②構造安全性の検証を踏まえ、必要なものについては免震材料の交換・改修その他必要な対策を速やかに実施し、その結果を国土交通省及び所轄の特定行政庁に報告すること。
③徹底した原因究明を行い、再発防止策を検討し、国土交通省に報告すること。
④東洋ゴム工業(株)が保有する他の大臣認定について、改めて法適合性を確認すること。
(3)特定行政庁に対する要請
本日、関係する特定行政庁に対して、大臣認定不適合が判明した免震材料が設置された建築物について、東洋ゴム工業(株)からの報告を受けて、建築基準法上の不適合状況の確認、構造安全性の検証結果を踏まえた是正指導を行うよう要請しました。

引用元:平成27年3月13日付 国土交通省住宅局建築指導課・住宅生産課|プレスリリースより抜粋

さて、上記の国土交通省が発表した対策の中の東洋ゴム工業(株)に対する指示の中で気になる点があります。

「構造安全性の検証を踏まえ、必要なものについては免震材料の交換・改修その他必要な対策を速やかに実施し、その結果を国土交通省及び所轄の特定行政庁に報告すること。」という指示の内容です。

東洋ゴムのプレスリリースにおいても、「万が一、当該製品を使用した対象物件の安全性に懸念が生じた場合は、国土交通省及び特定行政庁のご指導の下、当該製品の交換等の対応を可及的速やかに進める」とあります。これは国交省の指示と符合しています。

問題は、そもそも製品の性能に対してのバラツキの幅が大きいために、性能評価の結果、正規に認定を取得できなかった製品(基準に満たない不良品)です。それが、既に設置されてしまったからといって、交換・改修が免除される場合の可能性を国交省側が表明してしまっています。それでは自ら性能評価の妥当性を否定してしまうことになります。

性能評価結果、不適合であったが、内緒で使ってしまったから、不適合であっても安全に問題がないようなら、目をつぶろうということです。
性能の幅にばらつきが大きいから、不適合だったものに対して、どのように安全性の計算をするというのか、全く意味がわかりません。

もし、バラツキの最低値(性能における最低数値)で安全性が確認できるのであれば、建築基準法で定める評価試験の基準値は一体何の意味を持つ数値なのでしょうか。建築基準法の第1条に安全性のための「最低限の基準」と謳ったその基準を下回っても、安全と判断するのでしょうか。それとも東洋ゴムの該当製品が評価基準に入るように、全体の評基準を下げるのでしょうか。基準を維持して認定を取得している真面目な企業は、バカを見るだけになってしまいます。

また、基準が変更されることがあれば、不正をした東洋ゴムを救済するために、国民の安全を犠牲にすることになります。

「万が一、当該製品を使用した対象物件の安全性に懸念が生じた場合」とは、どの口から出る発言でしょうか。こういうのを「盗人猛々しい」と言うのです。建築基準法に対し不正な基準外の製品を販売しておいて、「安全性に懸念が生じる場合が万が一」と言ってるわけです。安全性の懸念は、「万が一」ではなく、「万が万」なのだとはっきりいいたいです。大したことじゃないとタカをくくらなければ出来ない発言です。少なくとも謝罪をしている態度ではないです。

まさか、国交省は東洋ゴムに加担したりはしないでしょうね。