【防災】冬到来、雪崩に備える

季節も12月に入り、いよいよ本格的な冬を迎えます。毎年冬になると雪崩(なだれ)災害により命が失われています。雪崩が最も発生する月は1、2月と言われています。雪崩は人が住む集落や道路などで多く発生しており、その危険性は雪山を登る登山家など、一部の人だけにあるのではなく、観光で雪国を訪れる際にも注意が必要です。

雪崩災害について

日本は世界でも有数の雪が多い国です。国土の半分以上が豪雪地帯であり、そこに住む人は全人口の2割近くいるそうです。さらに山地が国土の約7割を占めており、雪崩の危険箇所は全国に20,501箇所もあると言われています。

国土交通省の統計データによると、昨年2013年の雪崩の発生件数は22件あり、8名の方が亡くなっています。過去のデータでは100件以上の雪崩が発生し、20名以上の方が亡くなった年もあります。これらの雪崩の多くは集落や道路などで発生しています。

雪崩の種類

雪崩の種類は大きく別けると「全層雪崩」と「表層雪崩」に分けることができます。

「全層雪崩」は山の斜面に積もった雪が地表からごっそりと全て流れる雪崩です。「表層雪崩」は、以前降り積もっていた雪の上に新雪が積もり、新たに降った表面部分の雪だけが流れ落ちる雪崩です。雪崩の種類によって流速、発生多発時期、前兆現象などに違いがあります。

「全層雪崩」は気温が上昇する春先や雨が降った後に発生しやすいと言われています。

一方、「表層雪崩」は気温が低く降雪が続く1、2月頃、特に気温0度以下の日が続き、吹雪や強風の際に発生することが多いと言われています。

スピードは全層雪崩で時速40~80km、表層雪崩で100~200kmと言われています。

雪崩が発生する場所について

雪崩の発生する地点の傾斜角度は、概ね30度以上の場所が多いと言われています。特に危険とされているのが35~45度ほどの傾斜地です。55度以上になるとそれほど雪が積もらないことが多く、安全とまでは言えないものの発生しにくくなると言われてます。

ちなみにスキーの上級者コースがだいたい30度位と言われています。分度器の目盛りで見るとそれほど急に感じないかもしれませんが、実際に30度の傾斜の上に立って下を見下ろすとかなりの急こう配に感じます。

仮に傾斜が30度未満の緩やかな場所にいるからといって安全というわけではありません。雪崩の規模や場所の状況などにもよりますが、発生した雪崩が山麓から数km先まで達したケースもあります。

発生地点からの雪崩到達距離についてはひとつの目安があります。麓から発生地点を見た際の角度が、全層雪崩では24度、表層雪崩では18度以内に到達する可能性があると言われています。

また、中高木が密集している場所では発生しずらい一方、低木や草地、まばらな植生の箇所では発生しやすいと言われています。

雪崩の到達距離

www.gov-online.go.jp

雪崩の主な兆候について

雪崩発生の兆候については、下記リンク先の写真で確認されるのが一番わかりやすいと思いますが、一般的に次の現象がある場所は発生の危険性が高いと言われています。

■雪崩の主な兆候
・雪庇(せっぴ)と呼ばれる、山の尾根から張り出している雪がある。
・スノーボールと呼ばれる、小さな雪の塊が落ちてくる。
・斜面にクラックと呼ばれる雪の割れ目が見える。
・斜面の凹凸がわからないほどに平らに積もっている。
・雪の斜面がシワ状になっている。

雪崩は自然的に発生する以外にも、人や動物が足を踏み入れることがきっかけで発生することがあります。雪崩による犠牲者の9割は、犠牲者自身または一緒にいた仲間によって誘発された雪崩が原因という話も聞きます。

雪崩対策について

雪国に住んでいる方、訪れる方にとって、雪崩は身近に起こりうる災害ではないでしょうか。スキー場で発生することもありますし、道路の通行中や渋滞中に巻き込まれた事例もあります。

スキー場ではパウダースノーを求めるスノーボーダーやスキーヤーも少なくないようです。コース外の滑走の危険性は言うまでもありませんが、たとえコース内でも過去には降り積もった新雪で表層雪崩が発生したケースもあります。

万が一、雪崩に巻き込まれた際にできることとしては、一般的に次のことが言われています。

・雪崩の流れの端へ逃げる。
・仲間が巻き込まれないように知らせる。
・身体から荷物をはずす。
・雪の中で泳いで浮上するようにする。
・雪が止まりそうになったとき、雪の中での空間を確保できるよう、手で口の前に空間を作る。
・雪の中から、上を歩いている人の声が聞こえる場合があるため、聞こえたら大きな声を出す

引用元:雪害では、どのような災害が起こるのか | 首相官邸ホームページ

上記の補足説明として、「身体から荷物をはずす」のは雪崩の中での抵抗を減らすためです。「雪の中で泳いで浮上するようにする」と言われているように、万が一巻き込まれた時は雪崩の表面(上)へと逃げるのが大原則と言われています。もし、荷物などを身に着けていると、抵抗が増して下へと引きづり込まれる力が強くなると言われています。スキーの最中ならばストックなどもはずした方がいいそうです。

「雪の中での空間を確保できるよう、手で口の前に空間を作る」については、手や腕で口や顔の回りを覆うことにより、雪崩に埋もれた際に空気を吸うための空間である「エアポケット」を作ることができます。雪崩の中には60~70%の空気が含まれており、エアポケットがあれば雪に埋もった15分後で93%。45分後でも8~25%の生存の可能性があるそうです。集落、道路、スキー場など、近くに人がいれば助かる可能性があるかもしれません。

ただし、雪崩は2次災害の危険性が特に高い災害のひとつです。救助する側は、見張りを必ずつけ、万が一雪崩が発生した際の逃げる方向などを事前に考えておく必要があります。

一番の雪崩対策

雪崩に巻き込まれた方を救出する際には、最初の10~15分が勝負だと言われています。しかし、救出はたやすいものではないと聞きます。また、雪崩に巻き込まれた際、「泳いで浮上するようにする」などの対策をご紹介しましたが、必ずしもそうできるとは限らないようです。

以前、雪崩で犠牲になった登山家の遺族の方が見たという、雪崩現場についての話を伝え聞いたことがあります。その話によると、巨大な雪の塊などがあり、凄まじいパワーを感じさせられたといいます。おそらくどうしようもできなかっただろうという話でした。

言うまでもないことかもしれませんが、やはり雪崩に対しての一番の対策は危険性がある箇所へ極力立ち入らないようにすることに越したことはないようです。雪が多く降る自治体では、ハザードマップを作成している所もあるようです。

参考WEBサイト

紹介:sKenji