いよいよ富士山が夏山シーズンを迎える。山梨県側の吉田ルートが来週火曜日、7月1日に山開きとなる。静岡県側にある残り3つの登山ルートは7月10日に開山予定となっている。
一度は登っておきたい「フジヤマ」
私が富士山に登ったのは、およそ10年前の9月中旬だった。
当時、積極的に「富士山に登りたい」というよりは、登っておかねばという気持ちが強かったと思う。昔、半年間ほど海外を旅行していたことがあったのだが、現地で出会った人に「フジヤマは登ったか?」と幾度となく聞かれた。まだ一度の登ったことがなかった私は「ない」と答えるたびに「一度は登っておかねば」と思っていた。
富士山は富士宮口から登った。なぜ富士宮ルートを選んだかというと、単純に最短距離という理由である。
スタートは夜中の午前1時。学生時代からの友人と私の二人での登山だった。ヘッドランプをつけて夜の富士山を登る。富士のすそ野に広がる夜景と満点の星を見ながらの登山が新鮮に感じた。
頂上には、およそ4時間かけてたどり着いた。日の出を山頂で迎える。雲海から昇ってくるご来光を見た時、心の底から富士山に登ってよかったと思った。富士山頂から見る日の出は、それまでに見たものとは別物に感じた。
太陽が顔だすと「お鉢巡り」をした。富士山はご存知の通り火山である。山頂には火口があり、その淵を歩いて一周することをお鉢巡りと呼んでいる。お鉢はおよそ1時間半ほどで周ることができる。一周した後に眠気と戦いながら再び富士宮口に下山をした。
日本の象徴的な山、「富士山」。山に登ったことがない人でも、富士山だけは登ってみたいと思う人も多いかもしれない。山開きに際し、富士登山に必要なもの、気になる高山病のことなどを2回に分けて書きたいと思う。
富士登山に必要な装備
富士山に登ると決めた際に、まず、重要なのが持ち物である。下記に富士登山の必需品をピックアップしてみる。
■富士登山装備品リスト
【靴】ハイカットタイプの登山靴がおすすめ。ローカットタイプに比べて、
ねんざや砂利が靴に入りづらくてよい。
【服装】平地の真冬の服装と同レベルのものが必要。
服は温度調整ができるように、Tシャツ、長袖シャツ、
防寒着(ダウンジャケットもしくはフリースなど)を用意する。
標高が高い富士山山頂は、気温が平地よりも約23度低い。
真夏でも朝方には氷点下になることもある。
また、風速1mで体感温度が約1度下がるので、風をさえぎる服も
必要であるが、これは雨具でも代用できる。
服の素材は重要で速乾性のあるものにする。登山用として販売されて
いるものならば間違いはないだろうが、夏山登山に限定するならば、
速乾性さえあれば、登山専用でなくかまわない。ズボンについては、
ジーパンはNG。動きづらい上に雨などに濡れたら体温を大きく
奪われてしまう。登山用として売られているズボンが望ましいが、
なければジャージでもいい。靴下は登山用の厚手のものだと、疲労が
大きく軽減されるのでおすすめである。
【雨具】雨具は最も重要な装備のひとつである。かならずセパレートタイプの
ものを選ぶ。もし、夏の富士山を登るにあたり、装備に一番お金を
かけるものをあげるとすれば、個人的には雨具だと思う。
登山用の防水透湿素材の雨具を強くおすすめする。雨具はたとえ雨が
ふらなくても防風用としても使用できる。
天気予報が晴天でも絶対に持っていかなければいけない装備である。
【ザック】高価なザックはフィット感が高く、疲労が軽減されるものが多いので
おすすめである。しかし、20~30リットルほどの小型ザックならば、
大型のものと比べてそれほどシビアに考えなくてもいいだろう。
富士登山でのザックの大きさについては、一概には言えないかも
しれないが、30リットル前後のものを使用する人が多いように思う。
【ヘッドランプ】両手が自由に使えるのでヘッドランプにする。懐中電灯は不可。
LEDタイプのものがおすすめ。
【水】個人差、天候、登山の時間帯によって大きく異なってくるが、少なくとも
一日あたり2リットルは持っていきたい。ただし、富士山では山小屋が
標高約200~300m毎にあるので、途中で購入することも可能。
水筒はハイドレーションタイプのものが便利でいい。
【行動食】好みと計画に応じて必要分を用意する。
ただし、天候が崩れても手軽に素早く食べれる非常食も1,2食分は
用意しておく。
【地図】毎年、道を間違えて別の登山口に下山する登山者が多いとのこと。
以上は必需品だが、そのほか紫外線対策として、帽子やサングラス、日焼け止めがあったほうがいい。高地は紫外線が特に強い。
また、エマージェンシーシートもあるといいかもしれない。エマージェンシーシートとは、防風・防寒用などに使える極薄シートで、ポリエステル性のフィルムにアルミニウムを蒸着して作られているものが多い。数十グラムと軽く、値段も安いのでいざという時のためにひとつ用意していると安心である。登山用品店、ホームセンターなどで購入できる。
登山用ストックは、疲労や膝への負担などを軽減してくれるが、全く使ったことがない方は、登山前に少し使って慣れておいた方がいいだろう。初めての使用すると、慣れないためにかえって疲れてしまう恐れもあるかもしれない。
登山ルートについて
富士山の登山ルートは下記4つがある。ルートの詳細解説については、環境省などが開設している「富士登山オフィシャルサイト」が丁寧でわかりやすい。
○吉田ルート :4つのルートのうち、登山者がダントツ多い。6割近い登山者が
このルートで登っている。標高約2300mから登り始める。
○富士宮ルート:登り始めの標高が一番高く、山頂までの最短ルートである。
登山者数は吉田ルートについで多く、約4人に1人がこのルート
から登っている。標高約2400mから登り始める。
○須走ルート :上記2ルートに比べると登山者数が少ないので、登山者が少ない
ルートで登りたい方にはおすすめのルート。
富士山東側斜面にルートがあるために、日の出前に山頂に
たどり着けなくても、途中からご来光が拝める長所もある。
標高約2000mから登り始める
○御殿場ルート:4つのうちで最も登り始めの標高が低く、距離も長い。
途中の山小屋の数も少ないので、健脚者向けのルートである。
一番静かな富士登山が可能である。他のルートと比べて、標高の
低い場所からゆっくりと高度をあげていくので、高山病のリスク
が減ると思う。標高約1450mから登り始める。
なお、登山シーズン中はマイカー規制が行われるので注意が必要である。(※御殿場ルートを除く)
<山登りのススメ Vol.15 ~富士山 後編 に続く~>
※後編では、高山病について書く予定です。
富士山・富士宮登山口
参考WEBサイト
Text & Photo:sKenji