[燃料取出で計画変更]4号機プールの燃料の一部を6号機へ

福島第一原子力発電所4号機燃料取り出し作業(共用プールでの作業)キャスクからの燃料取り出し(撮影日:平成25年11月22日)

photo.tepco.co.jp

東京電力は、6月18日の定例会見ならびに報道配布資料で、「4号機使用済燃料プールからの燃料取り出し作業における一部計画の変更」について発表した。

これまで4号機の使用済燃料プールに蓄えられていた燃料は、新設された取出し用設備で順次プールからの取り出しが進められ、共用プールという施設に移送されてきたが、4号機プールに残る燃料のうち、使用していない新燃料180本を6号機原子炉建屋の使用済燃料プールに移送・保管することになった。

なぜ?

4号機燃料取り出し作業(キャスク移動)クレーンでの吊り降ろし (撮影日:平成25年11月21日)

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最近では、4号機プールから燃料を取り出して共用プールに移送したという話しか聞く機会が少なくなっていたが、もともと共用プールには、4号機にあった1533体の燃料集合体のすべてを収容する空きがなかった。つまり、共用プールからは燃料集合体を保管用のキャスク(核燃料の移送や保管に使われる大型容器。水による冷却を行わなわうことなく大気中で保管できる密閉性を確保した空冷式の容器)に入れ替えて、すでにキャスク19本分の燃料(1004体)を、高台の仮保管設備に移送してきた。

共用プールからキャスクに入れて運び出した空き地に、4号機の燃料は運び込まれていた訳だ。ところが、高台で保管するためのキャスクの製造が間に合わない恐れが出てきた。そこで6号機の燃料のうち放射線をほとんど出さない新燃料180本について、使用済み燃料プールを利用することになったという。

ところが、6号機の使用済み燃料プールにも180本の空きがないため、6号機プールの中の新燃料230体を、同じ6号機のオペレーションフロアにある新燃料貯蔵庫に移して空きをつくってから、4号機の新燃料180本を運び入れるとしている。

使用済み燃料の保管場所の問題は、事故原発の中だけでさえぎりぎりの状況だ。

どうしてキャスクは足りなくなったのか

4号機燃料取り出し作業(キャスク移動)トレーラーへの積込み(撮影:平成25年11月21日)

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会見での東京電力の説明によると、製造が間に合わない恐れが出ているキャスクは、事故原発に残された燃料の移送計画が立てられる中、原子力規制委員会が昨年7月に新基準を出す以前の発注。問題はキャスクを製造する上での溶接の手順や方法で、新基準に適合しない可能性が指摘されている。まだ製造が間に合わないと決まったわけではないが、「いまが判断ポイント」と考えて、計画の変更を打ち出したのだという。

放射線をブロックする水中ではなく、金属製の容器の中に核燃料を詰め込んで普通の場所に保管するキャスクだから、トップクラスの安全性が求められる。キャスクが足りないというニュースからはマイナスイメージも感じられるが、安全確保の結果として生じた不都合と考えることもできるだろう。

キャスクが完成するまで待てなかったのか

東京電力の会見動画を見ると、ニコニコ動画の記者からの管理上のリスクについて質問に対して東京電力の担当者は次のように答えている。

今回移送するのは新燃料なので発熱があるわけではない。そのもの自体から放射線が出るものでもない。ただガレキ等が付着しているので少し線量が高い可能性がある。本来は新燃料はキャスクではなく、新燃料専用タンクという容器で運べるのだが、キャスクに入れて送る。

6号機だと4号機から距離があるが、キャスクに納めて通常の燃料輸送と同じように行うので問題ない。

4号機プールの使用済み燃料は関心が高いので、しっかり燃料を取り出して安心していただきたいということ。新燃料なので問題ないが、健全な設備に移送することでより安全を高めるということを優先しての措置。

引用元:東京電力の定例会見(6月18日)

いつになるか分からないキャスクの完成を待っていると、当初予定していた年内の取り出しが遅れてしまう恐れがある。共用プールへの移送という当初予定からは逸れるが、心配されている4号機からスケジュールどおりに燃料をすべて取り出すことを優先したという説明だった。

共用プール建屋から乾式キャスク仮保管設備への既設の乾式貯蔵キャスク1基の構内輸送(撮影日:平成25年4月4日 )

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資料と会見から分かること

4号機プールからの燃料取出しは、ほぼ毎週キャスク2つ分の44体で作業は順調に行われているように見えていたが、共用プールからの燃料取出しという取り出しとワンセットになった関連タスクでは水面下で苦戦が続いていた。

4号機から最も遠距離がある6号機への移送について、東京電力は問題ないというが、参考資料資料には、6号機オペレーションフロアでの燃料のやりくりについて、次のような文言もある。

移送先の選択肢を広げるため新燃料貯蔵庫へ直接移送する案も検討している。なお,新燃料貯蔵庫周辺の雰囲気線量が増加する可能性があるが,遮へい材等を設置することによって作業上は問題ないと考えている。

引用元:福島第一原子力発電所4号機使用済燃料プールからの 燃料取り出し作業における一部計画の変更について |東京電力 平成26年6月18日

新燃料だから問題ないとは言いけれないことを、東京電力自身認識している。

さらに新基準を満たさない可能性が指摘されているキャスクが基準適合を達成できるのかは未知数だ。4号機の分だけでやりくりに窮している状況で、来年度上半期に開始するとロードマップに記された3号機の分は大丈夫なのだろうか。

福島県のデータ(http://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/16025c/genan10.html)から作成

東京電力が毎日公開している「日報」には、大きな新規事項が記されない日が少なくない。しかし、そのかげで「綱渡り」とか「自転車操業」と表現するほかない作業が、今日も続いているらしい。

文●井上良太