東京電力は、6月4日付で参考資料「福島第一原子力発電所1号機 原子炉建屋3階機器ハッチ開口部へのバルーン設置について」を公表した。これは1号機建屋カバーの撤去に向けての一連の作業のひとつだとのこと。
水素爆発を起こした建屋からの放射性物質の飛散を抑える目的で、1号機では原子炉建屋全体を覆うカバーが設置されているが、今後、がれきの撤去や燃料プールからの燃料取出しなどの作業を進めるためには、建屋カバーの解体が必要になる。
建屋カバーを設置することで放射性物質の放出量が約1/4に低下していると評価されてきた(*1)。そのカバーを撤去するわけだから、建屋からの放出量が増加することが予想されている。今回のバルーン設置は、カバー撤去に伴う放射性物質放出量を抑えるために行われたものだ。
バルーンが設置されたのは、大物搬入建屋から原子炉建屋の1階~4階部分まで貫通している機器ハッチの3階部分。参考のため、2013年12月に公表された機器ハッチ周りの調査結果のリリースから引用する。1階から4階までつながる大規模な「吹き抜け」だとわかる。
1号機では放射性物質の飛散を低減するために、2つのシステムが稼働している。1つは2011年10月に設置された建屋カバーの排気設備で、カバー内の空気を天井部分から吸引しフィルターで放射性物質を捕集する。もう1つは格納容器からの放出抑制のために2011年12月に設置された格納容器(PCV)ガス管理システムだ。
オペレーティングフロアと呼ばれる建屋4階部分に散乱するがれきを撤去するためにカバーを外してしまうと、カバー内部で動いていた排気設備は使えない。
建屋内部からの放射性物質の放出を抑制するには、建屋の開口部を極力小さくしたい。その一環として設置されたのが、極めて大きな開口部である機器ハッチを塞ぐバルーンというわけだ。
上の写真は2012年10月24日に、機器ハッチから気球(こちらもバルーン)による調査で撮影されたもの。カバーに覆われた1号機の内部では、爆発当時から時間が止まった状態のようだ。
少しでも早い廃炉と事故収束を祈りつつも、安全とこれ以上放射性物質を排出しないことを第一に作業を進めてほしい。
参考ページ
文●井上良太
機器ハッチから照明とカメラを取り付けた昇降装置で行った建屋躯体の撮影調査