地下水バイパスの海洋排出が実施されたその日、タンクエリアの堰内溜まり水をRO装置で処理した水を構内に散水。トリチウム濃度は?
5月21日(水曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点を中心に読み解きます。
※東京電力「福島第一原子力発電所の状況について(日報) 2014年」には、5月22日14時25分現在も、5月21日分の日報はリンクされていません。
http://www.tepco.co.jp/nu-news/index-j.html
地下水バイパス一時貯留タンクから海への排出を実施
核燃料がメルトダウンした建屋内に地下水が流れ込むことで汚染水が毎日400トン増えているとされる事故原発。建屋の山側に掘った12本の井戸で、汚染される前の地下水を汲み上げ、海へ排出する地下水バイパス。昨年5月実施開始の予定から1年遅れで5月21日午前10時25分から海洋への排出が開始されました。
以下、東京電力の「報道関係各位一斉メール」から引用。
昨日(5月20日)お知らせした地下水バイパスの排水予定についての続報です。
本日(5月21日)午前10時25分、福島第一原子力発電所において地下水バイパス揚水井から一時貯留タンクに汲み上げていた地下水について、海洋へ排水を開始いたしました。
本日は約560トンの排水を予定しております。
排水状況については、午前10時30分にパトロールを実施し、漏えい等の異常がないことを確認しております。
なお、地下水バイパスの実施にあたり、福島第一廃炉推進カンパニー・プレジデントである増田のコメントについて、当社ホームページに掲載しておりますのでご覧ください。
URL:http://www.tepco.co.jp/cc/press/2014/1236547_5851.html
以 上
地下水バイパスの排水についての続報です。
本日(5月21日)午前10時25分より海洋への排水を実施していましたが(お知らせ済み)、同日午後0時42分に排水を終了しました。
現場の状況について、パトロールを実施し、午後0時47分に漏えい等の異常がないことを確認しました。
予定通り561トンの排水を実施しております。
以 上
続いて、当日午後3時現在の「日報」より引用。
※1~4号機原子炉建屋等への地下水流入抑制対策として設置した地下水バイパス設備については、現状における地下水の水質確認を行うため、4月9日より揚水ポンプを順次起動し、試験的に地下水バイパス揚水井から地下水の汲み上げを行ってきた。
汲み上げた地下水は、一時貯留タンクに貯留した後に水質確認を行っており、当社および第三者機関による分析結果において、運用目標値を満足していたことから、
地下水バイパス揚水井から一時貯留タンクに汲み上げていた地下水について、5月21日午前10時25分より海洋への排水を開始。
同日午後0時42分に排水を終了。
現場の状況について、パトロールを実施し、午後0時47分に漏えい等の異常がないことを確認。なお、排水量については561m3。
一時貯蔵タンクの容量は1000トンということなので、第一回目の地下水海洋排出は控えめの量だったといえる。また、毎日400トンの地下水が建屋内に流入しているとしたら、今回の排出量はその1.5日分にも満たない。
建屋に流入する地下水量を低減させるという地下水バイパスの目標からすると、排出量の増加が求められるところだが、東電が発表している計画では、一時貯留タンクに溜めた地下水を詳細測定を行った上で海に排出するとされている。
排出を急ぐあまり、放射性物質の測定がおろそかになったり、誤操作や配管の不具合など予期せぬ事態で汚染水が放出されることがないよう、万全の注意を払って作業を行ってほしい。また、広く市民によるチェックが機能するよう、正確な情報の迅速かつ定期的な提供を求めたい。
集中廃棄物処理施設のトレンチに工事であけた孔から地下水が流入(続報)
集中廃棄物処理施設と呼ばれる建屋群の「高温焼却炉建屋」と「プロセス主建屋」の間にあるトレンチ(ケーブル類の配線・配管や海水の取水のために設置された立坑とトンネルからなる長大なマンホール)内部に、工事でトレンチ天井部にあけた孔から地下水が流入した件で、トレンチ内の水の移送と水位について新規に記載。
5月20日午前0時5分から5月21日午前3時50分まで、集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へのトレンチ内部の水の移送を実施し、移送停止後にパトロールを実施し、漏えい等異常がないことを確認。
(中略)
また、5月21日午前7時時点のトレンチ内の水位は1226mm。
配管トレンチの設置工事で基礎として敷設された砕石層からの地下水、あるいは汚染水流出の可能性が指摘されているが、天井面から地下水が流れ込んだとすると、トレンチはほぼ地下水に浸されていることになる。となるとトレンチの継ぎ目からの恒常的な地下水流入があったはずで、このトレンチへの地下水流入には謎が多い。
トレンチ周辺の地下水位やトレンチが設置されている深さ、またトレンチそのものの水位密性などについての情報公開が求められる。
21日時点では報道配布資料、報道関係各位一斉メール、写真・映像ライブラリーともに追加情報は公開されていない。
タンク堰内に溜まった雨水を逆浸透膜処理装置(RO装置)で処理した水を敷地内に散水
※汚染水タンクエリアの堰内に溜まった雨水のうち、放射能濃度が暫定排水基準を超える雨水については、鋼製角型タンクや地下貯水槽等に貯蔵。
今回、暫定排水基準を超える雨水を処理するための設備として、放射性物質を除去する逆浸透膜処理装置(RO装置)を設置。当該装置については、5月21日より運用を開始。
放射能濃度が運用目標値を満足する処理水について、同日午後1時22分より処理水を敷地内へ散水開始。
この雨水処理設備を使った処理水の分析結果が報道配布資料として公開されている。セシウム134、セシウム137、ストロンチウム90の代替として使われる全β、さらにトリチウム(三重水素)について、告示濃度限度(経済産業大臣が告示で定めた放射性物質の濃度限度)に対する割合を求め、その総計が0.22以下になるようにとの運用目標が定められていると読み取れる。
逆浸透膜処理装置(RO装置)は海水から真水をつくるのに使われる装置で、塩分はもちろん、多くの核種を分離することができる。セシウム137やストロンチウム90も同様だ。ただし問題は多くが水として存在するトリチウムだけは除去できないこと。さらに、トリチウムの告示濃度限度は「60,000Bq/L」と極めて高い設定なっている(地下水バイパスで東京電力が設定した運用限度1,500Bq/Lの40倍)。たとえばトリチウム濃度が12,000Bq/L程度あっても、他の放射性核種をほとんど取り除くことができれば運用可能という数値設定である。この運用基準をパスした水が敷地内に散水されることになる。
1号機~6号機
新規事項なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆2号機
1号機と同じ4項目に加え、
・2号機タービン建屋地下→3号機タービン建屋地下へ高濃度滞留水を移送中(平成26年5月17日午前9時57分~)
◆3号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(プロセス主建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年5月19日午前10時6分~)
※使用済燃料プール循環冷却系については、使用済燃料プール内の燃料交換機本体撤去作業に伴い、4月23日~6月上旬の間、原則毎週月曜日午前7時~土曜日午後4時の間停止予定(停止時間は最長で129時間、毎週土曜日午後4時~月曜日午前7時の間は運転予定)。また、水温は運転上の制限値65℃に十分な余裕を持った45℃を超えることがないよう、同冷却系停止前のプール水温度を29℃以下として管理する。
<最新の作業実績>
5月17日午前11時7分起動(起動後の温度:24.4℃)
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備の状況
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置運転中
・第二セシウム吸着装置(サリー)停止中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
※ALPSは3系統とも処理運転は停止しているはずだが、設備内での循環運転(出口から入口につないで運転と考えられる)を継続しているため、表記上は実際の処理水を使っての「ホット試験中」、ということだろうか。
地下水バイパス揚水井の状況
※地下水バイパス揚水井No.1~12のサンプリングを継続実施中。