4号機原子炉建屋山側のサブドレン観測井(N14)、再分析でも高いトリチウム濃度を検出
5月19日(月曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点を中心に読み解きます。
G4エリアパトロール中の協力企業作業員が転倒し右足を負傷、搬送
※5月19日午前11時45分頃、G4タンクエリアにおいて、パトロール中の協力企業作業員が転倒し右足を負傷。
入退域管理棟救急医療室にて医師の診察を受けたところ、緊急搬送の必要があるため、同日午後0時49分に救急車を要請。
なお、当該作業員に身体汚染はない。同日午後2時7分に南相馬市立総合病院に到着。現在、医師の診察中。
1号機,2号機
新規事項なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆2号機
1号機と同じ4項目に加え、高濃度汚染水の移送について記載
・2号機タービン建屋地下→3号機タービン建屋地下へ高濃度滞留水を移送中(平成26年5月17日午前9時57分~)
3号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
加えてタービン建屋地下の高濃度滞留水の移送先を、高温焼却炉建屋からプロセス主建屋へ切り替えたことを記載
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送実施(平成26年4月24日午前10時34分~平成26年5月19日午前10時8分)
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(プロセス主建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年5月19日午前10時6分~)
使用済燃料プール循環冷却系は5月17日午前11時7分の起動を「最新の作業実績」として記載。(起動後の温度:24.4℃)
4号機~6号機
新規事項なし
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備の状況
新規事項なし
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置運転中
・第二セシウム吸着装置(サリー)停止中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
地下水バイパス揚水井の状況
新規事項なし
※地下水バイパス揚水井No.1~12のサンプリングを継続実施中。
焼却工作建屋の水位、焼却工作建屋西側サブドレン水の分析結果
<最新の集中廃棄物処理施設各建屋水位>
各建屋内の滞留水の深さについては、常設水位計による監視において、プロセス主建屋への移送後の水位と比較し、焼却建屋では2.2cmの上昇。引き続き監視を継続。
5月19日午後2時現在の各建屋深さ
・焼却建屋:深さ19.8cm(4月14日移送停止後と比較し、2.2cm増)
・工作建屋:5月16日午前10時30分、回収作業が完了。
<最新のサブドレン水サンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
<最新のパトロール結果>
5月18日のパトロールにおいて新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない(一部実施できない場所を除く)。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側の状況
新規事項なし
1~4号機サブドレン観測井の状況
新たに設置された4号機原子炉建屋(山側)のサブドレン(N14)の分析結果について追記。
5月15日採取の分析では、セシウム134が0.92Bq/L。セシウム137が2.6Bq/L。全ベータが検出限界値未満(検出限界値:11Bq/L)と低めの数値だったにも関わらず、トリチウムは11,000Bq/Lと高い結果が出ていた。この結果について「地下水を採取してから分析するまでの過程において、放射性物質が混入した可能性も含めて再分析を実施」したのが今回の記載。
トリチウムは8,900Bq/L。これは前回の分析結果とほぼ同等の値であり、分析の過程における放射性物質の混入はないものと判断。
ただし、全ベータ放射能濃度が検出限界値未満となっていること、また、他のサブドレンの値に対しトリチウム濃度が高めであったことから、再採取分析を実施予定。今後も引き続き監視を継続する。
前回同様、全ベータ放射能濃度が検出限界値未満となっていることからも、サンプル採取後の混入という仮説はほぼ消えたとみていいだろう。そもそもトリチウムだけが混入するという状況そのものが考えにくい。
それに、高い数値が出た時に放射性物質の混入を疑うのであれば、まったく同じ理屈で低い数値が出た時には、真水などで薄まった可能性を疑ってかからねばなるまい。
高いトリチウム濃度が検出される原因についての調査が待たれる。
地下貯水槽の状況
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年5月19日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太