日本三景・松島には、湾に浮かぶ島々を眺める絶景ポイントがいくつかあります。代表的なのが、四大観(しだいかん)と称される「富山」、「多聞山」、「大高森」、「扇谷」の4つの展望地です。しかし、それらに勝るとも劣らないと思われるのが「桜咲く季節の『西行戻しの松公園』」です。
西行戻しの松公園は、JR仙石線・松島海岸駅の西側に位置する姉取山の斜面中腹にあります。松島湾を望むよう作られた公園には260本余の桜が植えられているそうです。園の名称は、平安時代の歌人・西行法師がこの地を訪れた際に、松の大木の下で出会った童子と禅問答をして敗れ、松島行きをあきらめたことに由来すると言われています。西行と牧童との禅問答。その気になる内容は、公園内に設置された看板に書かれています。
歌人西行(1118~1190)がこの地にて
「月にそふ桂男(かつらおとこ)のかよひ来てすすきはらむは誰が子なるらん」
と一首を詠じて悦に酔っていると、
山王権現の化身である鎌を持った一人の童子がその歌を聞いて
「雨もふり雲もかかり霧も降りてはらむすすきは誰れが子なるらん」
と詠んだ。西行は驚いてそなたは何の業をしているのかと聞くと
「冬萌(ほ)きて夏枯れ草」を刈って業としていると答えた。
西行はその意味がわからなかった。
童子は才人が多い霊場松島を訪れると恥をさらすとさとしたので、西行は恐れてこの地を去ったという伝説があり、一帯を西行戻しの松という。
西行に関するこのような伝説は各地にあり、古くから語り継がれている。
(*桂男=美男子 *業=仕事 *冬萌(ほ)きて夏枯れ草=麦)
平成17年6月 松島町教育委員会
引用元:松島町教育委員会(公園内に設置された説明文より)
言い伝えによると、西行は、松島には行かずに引き返したようです。しかし、たとえ、松島を訪れなかったとしても、西行戻しの松から、湾に浮かぶ島々を眺めるだけでも、その魅力を感じることができたような気がします。
ひょっとしたら、西行は、ここからの眺めだけで、松島に満足してしまったのではないだろうか。桜が咲く「西行戻しの松公園」は、そう思わせてしまう場所です。
西行戻しの松公園・詳細情報
公園には、無料の駐車場があります。松島湾の眺めは、「西行戻しの松」近くにある「白衣観世音」付近が、一番いいかもしれません。掲載している写真は、いずれも「白衣観世音」付近から撮影したものです。
私は車で行きましたが、地図で調べてみると、松島駅海岸駅から、歩いて行くこともできそうです。
徒歩の場合は、駅西側(駅を出た裏側)を走る県道144号線の反対車線側に作られた階段を登った後、線路を渡り、道なりに山の上の方へ歩いて行けば、西行戻しの松公園に行けそうです。
徒歩でおよそ15~20分。ただし、急な登り坂となるので、歩きやすい靴と服装で!
■西行戻しの松公園
【場所】宮城県宮城郡松島町松島字犬田
【定休日】無休
【問い合わせ】022-354-5708(松島町産業観光課商工観光班)
【アクセス】JR仙石線松島海岸駅から車で5分
【駐車場】有(150台)
西行の戻し松
参考WEBサイト
Text & Photo:sKenji