3月25日(火曜日)公開の「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」を、前日からの変化や変更を中心に見ていきます。
このところ「新規事項なし」だった海側でインシデントが発生しました。
3号機海側モバイル処理装置で漏えい検知器が作動
海側に設置されていた移動式のモバイル処理装置で漏洩です。
※本日(3月25日)午前10時20分頃、3号機海側モバイル処理装置*にて、漏えい検知器が作動。現場状況を確認したところ、吸着塔に設置したドレンパン内に水が溜まっていることを確認。
漏えいした水は、同処理装置内のドレンパンの中に収まっており、外部への汚染水の流出はない。
漏えいした水は、吸着塔の空気抜きラインからの水を受けるために接続されているポリタンクから溢れたものと推定。なお、同処理装置の自動停止に伴い、漏えいは停止。
漏えい量について、ドレンパンの大きさ約3.3m×約2.0m、深さが実測値で19mmであることから、約101Lと推定。
ドレンパン内に漏えいした水の分析結果は以下のとおり。
・セシウム-134 1.2×103 Bq/L
・セシウム-137 3.5×103 Bq/L
・コバルト-60 1.2×102 Bq/L
・マンガン-54 9.7×101 Bq/L
・全ガンマ 4.94×103 Bq/L
〔参考:モバイル処理装置処理前の水(吸着塔入口):3月24日採取分〕
・セシウム-134 1.1×105 Bq/L
・セシウム-137 2.9×105 Bq/L
以上から、ドレンパン内に漏えいした水のガンマ核種の全放射能量は約5.0×105 Bqと推定。今後、水の回収を行う。
*3号機海水配管トレンチ内の高濃度滞留水の放射能濃度を低減する装置
「モバイル処理装置」は2・3号機海水配管トレンチ(配管やケーブルが納められた立坑やトンネル)内に溜まった高濃度の放射性汚染水の放射能濃度を低減するためにタービン建屋と海の間に設置されている放射性物質を分離する装置です。モバイルは「移動できる」ということで、放射性物質を分離する吸着塔ユニットは大型トレーラーの上に設置されていて、吸着材を取り換える際にはトレーラーごと入れ替えることで行われます。この装置は移動式のユニットと、固定式の送水系の接続部分からの漏えいが心配されていましたが、吸着塔ユニットそのものの空気抜き系からの漏えいであると記載されています。
多核種除去設備(ALPS)不具合の続報
汚染されたALPSのB系からサンプルタンクへの流路、サンプルタンク、さらに貯蔵タンクが設置されたJ1エリアに続くパイプラインの浄化運転のため、24日正午前後に再開されていたA,C系の運転について、サンプルタンクCの漏水が発見されたため処理停止。ALPSは循環運転に切り替えられたとの記載。
汚染水が流入した系統の浄化運転を行うため、3月24日午後0時59分にA系、同日午後1時にC系の運転を再開。その後、同日午後6時56分頃、サンプルタンク(C)側面のマンホールのリークチェックを行っていた当社社員が、1秒に1滴程度の漏えいを発見。漏れた水については、ドレンパン上でビニール袋に受けており、袋の中にとどまっていることから、外部への漏えいはない。また、漏えい量は約500mlと推定。
これに伴い、多核種除去設備(ALPS)A系およびC系の処理を同日午後6時58分に中断し、循環待機運転に移行。なお、サンプルタンク(C)側面のマンホールについては、タンク内部の洗浄のため一時開放しており、3月23日までに復旧している。
その後、サンプルタンク(C)の水位を下げるため、3月25日午前1時28分から水中ポンプにてサンプルタンク(A)への移送を開始し、同日午前1時50分に当該マンホール部の漏えいの停止を確認。漏えい量は約8Lであり、今後、漏えい箇所の修理を実施する。
1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
1,2号機排気筒の落下物に対する防護対策等のため停止していた使用済燃料プール代替冷却系を起動。
・3月14日午前6時48分、1号機使用済燃料プール代替冷却系について、1,2号機排気筒の落下物に対する防護対策等を実施するため、冷却を停止(停止時プール水温度:12.0℃)。3月24日、1,2号機排気筒の落下物に対する防護対策等の作業が終了したことから、同日午後3時37分、1号機使用済燃料プール代替冷却系を起動し、冷却を再開。1号機使用済燃料プール水温度は冷却停止時の12.0℃から19.3℃まで上昇したが、運転上の制限値60℃に対して余裕があり、使用済燃料プール水温度の管理上問題はない。
2号機〜5号機
新規事項なし
◆2号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆3号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年3月12日午後3時48分~)
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
加えてプール冷却系について新規事項として記載
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備の状況
新規事項なし。
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
※ システムを回していさえすれば「多核種除去設備(ALPS)ホット試験中」と表記されるようです。ALPSが機能を果たしているかどうかは、日報の記載だけからは判別することが難しいということ。そう言わざるを得ません。
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆H1東エリアのH1E-C2タンク
<最新のパトロール結果>
3月24日午前中のパトロールにおいて、H1東エリアのH1E-C2タンクフランジ部(南東側におけるタンク底部から2段目の水平フランジ)1箇所に錆があることを協力企業作業員が確認。その後、当社社員により70μm線量当量率の測定を実施したところ、高線量箇所であることを確認。測定結果については、以下のとおり。
[H1E-C2タンクフランジ部]
・70μm線量当量率(ベータ線): 27 mSv/h ※高線量率箇所から5cm離れた位置
・1cm線量当量率(ガンマ線):0.1 mSv/h ※高線量率箇所から5cm離れた位置
また、タンク目視点検において、当該箇所に漏えいは確認されておらず、当該タンクの水位監視においても、水位変動がないことを確認。なお、それ以外の箇所において新たな高線量当量率箇所(ベータ線による70μm線量当量率)は確認されていない(一部実施できない場所を除く)。また、堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による水位監視(トレンドによる監視または警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリアサンプリング
※H4エリアIグループNo.5タンクからの漏えいを受け、福島第一南放水口付近、福島第一構内排水路、H4エリアタンク周辺および地下水バイパス揚水井No.5~12のサンプリングを継続実施中。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
H6エリアサンプリング
※H6エリアC1タンクからの漏えいを受け、H6エリアタンク周辺のサンプリングを継続実施中。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側の状況
冒頭にモバイル処理装置での漏えい検知器作動を伝えているものの、
ここでは新規事項は最新のサンプリングについてのみ。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
地下貯水槽の状況
いつも通り、なんて言ってはならない。東京電力の日報では下記を記載しています。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年3月25日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太
「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」の一覧ページ。過去の「日報」との比較に役立ちます。