3月19日(水曜日)公開の「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」を、前日からの変化や変更を中心に見ていきます。
冒頭ではニュースでも報道された「多核種除去設備(ALPS)」ホット試験中断の続報が掲載されています。記載からは深刻かつ重大な事態の発生が読み取れます。
多核種除去設備(ALPS)すべての系統で処理中断(続報)
ABCの3系統ある多核種除去設備ALPSのB系に不具合。
入り口から入れた汚染水とほぼ同レベルのものが出口側からアウトプットされていました。汚染水処理の切り札と目されるALPSだから不具合の原因究明は重要です。しかし3月17日のサンプリング結果が出たのが3月18日で、その時にはサンプルタンクのみならず、1キロ以上離れた場所に新設された溶接式の巨大タンクにまで汚れた水が送りこまれていたのでした。
B系の原因究明は重要です。
しかし、さらに大きな問題があります。処理された水なのか、処理に失敗した水なのかの確認も行わないままに別の場所に移送、汚染を広げてしまうという管理の在り方。あるいは設計の問題もあるかもしれません。
「多核種除去設備(ALPS)すべての系統で処理中断」についての続報は、日々の日報をチェックするこの記事とは別に、下記の記事としてまとめました。
1号機~2号機
新規事項なし。
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・3月14日午前6時48分、1号機使用済燃料プール代替冷却系について、1,2号機排気筒の落下物に対する防護対策等を実施するため、冷却を停止(停止時プール水温度:12.0℃)。なお、停止期間は3月24日までを予定しており、冷却停止時のプール水温度上昇率評価値は0.066℃/hで停止中のプール水温上昇は約16.5℃と評価されることから、運転上の制限値60℃に対して余裕があり、使用済燃料プール水温度の管理上問題なし。
◆2号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・2号機タービン建屋地下→3号機タービン建屋地下へ高濃度滞留水を移送中(平成26年3月8日午前10時5分~)
3号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年3月12日午後3時48分~)
使用済燃料プール冷却の冷却塔について、散布水停止の影響調査を終了し散布水を復旧したことを新規事項として記載。
※3号機使用済燃料プール代替冷却系の二次系冷却塔のろ過水による散布水停止の影響調査について、冷却塔A系のファンベルトに緩みが確認されたため開始を順延していたが、冷却塔A系のファンベルト調整が終了したことから、平成26年2月26日午後2時、冷却塔をB系からA系へ切替えて散布水停止の影響調査を開始していた。(ここまで既報)
その後、調査が終了したため、平成26年3月18日午前 11時35分に散布水の復旧を行った。なお、散布水復旧後の運転状態に異常はなく、プール水温度は22.1℃(平成26年3月18日午前11時データ)であり、運転上の制限値65℃に対して、使用済燃料プール水温度の管理上問題なし。
4号機~6号機
新規事項なし。
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
※残留熱除去系ポンプ吸込ライン(A系、B系共通ライン)に設置されている安全弁(F-005)の点検が終了したことを受け、タービン補機冷却水系熱交換器(C)海水出入口弁他の点検を行うため、補機冷却海水系を3月18日から24日にかけて停止する。当該期間においては、燃料プール冷却浄化系(FPC系)が使用できなくなるため、残留熱除去系による非常時熱負荷運転(使用済燃料プール冷却)を行い、使用済燃料プール冷却を実施する。
3月17日午後1時50分、FPC系を停止し、同日午後2時26分残留熱除去系(RHR系)による非常時熱負荷運転を開始。なお、使用済燃料プール水温度は17.5℃と変化なし。
共用プール・水処理設備および貯蔵設備の状況
新規事項なし。
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
※H4エリアIグループNo.5タンクからの漏えいを受け、同様の構造のタンクの監視、および詳細な調査を継続実施中。
<最新のパトロール結果>
3月18日のパトロールにおいて新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない(一部実施できない場所を除く)。また、堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による水位監視(トレンドによる監視または警報監視)においても異常がないことを確認。
※H4エリアIグループNo.5タンクからの漏えいを受け、福島第一南放水口付近、福島第一構内排水路、H4エリアタンク周辺および地下水バイパス揚水井No.5~12のサンプリングを継続実施中。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
※H6エリアC1タンクからの漏えいを受け、H6エリアタンク周辺のサンプリングを継続実施中。
<最新のサンプリング実績>
新たに設置した地下水観測孔G-3において、3月17日に初めて採取した地下水の分析結果は以下の通り。今後も監視を継続していく。
(観測孔:G-3(新規))
・3月17日採取分:
全ベータ 35 Bq/L
トリチウム 検出限界値未満(検出限界値:110 Bq/L)
1~4号機タービン建屋東側の状況
汚染された地下水の海への流出が懸念される、タービン建屋の海側の観測孔や井戸や集水ピットからの地下水汲み上げ、地下水移送、サンプリングなどにつき、
新規事項なし。
地下貯水槽の状況
最新のサンプリング実績を記載。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年3月19日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太
「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」の一覧ページ。過去の「日報」との比較に役立ちます。