東松島市大曲浜で正月の獅子舞披露

獅子舞パレードは進む。ゆっくりゆっくりと。もう誰も家を建てることができなくなった大曲浜を。家族と住んでいた家、友だちの家、こどもの頃の遊び場、ヤンチャ時代のたまり場、獅子舞で回った道。獅子舞で回る家々で呑まされて、もう立てないとへたり込みながら聞いた「次いくぞ」との先輩の声。すべてがあったこの場所。ふる里。

大曲浜ではもう暮らすことはできない。
だから大曲浜獅子舞保存会は震災から復活した。

運動公園仮設

大曲浜に住んでいた人たちの多くが、現在の生活の場としている矢本運動公園仮設。
大曲浜のパレードに続いて獅子舞が訪れたのは、大曲浜の人たちが暮らす場所だった。

巨大な仮設団地に呼び込み太鼓の音が響く。

獅子が登場する。
風はやみ、穏やかな日差しが陽だまりをつくる。

獅子舞が始まると人々が集まってくる。

「あけましておめでとうございます」
「今年もよろしく」
「あっ、おめでとー!」
「久しぶり―、元気だった―?」

仮設住宅から集まって来た人たちが口々に正月の挨拶を交わしている。獅子舞が人々をみんなの輪に誘っているかのようだ。コミュニティの要。獅子舞とは本来そういうものだったのかもしれない。

強く、軽やかで、かつ優雅な笛の音。何日間も耳から離れない妙なる音曲。

取り囲む人々から歓声が上がる。獅子舞は早くもやぐらに。

小さな子供の獅子舞ファン(2歳の男の子とか)と獅子の対面。ちびっこの手にも小さな獅子が握られている。

仮設住宅での獅子舞は「3倍増量?」
三段のやぐらが幾度も幾度も繰り返される。
空に向けて獅子が伸びあがるたびに大きな歓声が上がる。

震災後に新たに加わったカッコ隊も、慰霊碑前に引き続き華やかな舞いを元気に披露。

どっと笑い声があがった、ちびっこ獅子舞ファンと大曲浜獅子舞の共演。
元気で明るい声援が、新春の光とともにあふれていく。

いつの間にか獅子舞を二重三重に取り囲んだ人たちに、健康と息災を祈念しながら威勢のよい獅子の舞いが続く。

今年一年、健やかでありますように、「カプ!」

小さなお子さんにはやっぱり怖かったかな。
でも獅子舞はこうじゃなくっちゃ。

ハグならぬカプを獅子がプレゼントして回る間も、太鼓や笛はフル回転。「明日は筋肉痛かなあ」なんて声も聞こえてくる中、メンバーの表情の晴れやかなこと。

ついに2頭目も登場。会場はいっそう賑々しい雰囲気につつまれて。

保存会の伊藤会長は、獅子舞の様子を見詰めているのではなく、集まってくれた人たちの表情から人々の思いを汲みとろうとしているのだと思う(たぶん)。