前編では、台風の基礎知識について書きました。後編では、台風災害への備えを中心に調べてみたいと思います。
台風による災害
台風がもたらす災害の種類は多い上、被害規模も計り知れません。1959年(昭和34年)の伊勢湾台風では、死者・行方不明者数が5,098名と甚大な被害が生じています。台風による主な災害を下記に書きます。
■台風災害について
○風害
強風による被害です。人、家屋、農作物などに大きな被害をもたらします。風速30m/s以上で走行中のトラックの横転、樹木が倒れるなどの被害がでます。風速40m/s以上になると家屋の倒壊の恐れ、鉄骨構造物が変形するなどの被害がでます。
天気予報の台風進路予想図には、台風を中心として黄色と赤色の円があります。黄色の円は強風域と呼ばれ、風速15m/s以上、赤色の円は暴風域と呼ばれる風速25m/s以上のエリアです。ただし、これらの数値はあくまでも最大平均風速であり、瞬間的には最大平均風速の3倍以上の風が吹くこともあります。ちなみに先日、フィリピンを襲った台風30号は、瞬間最大風速90m/s以上とも言われています。
人の転倒、家屋の倒壊のほか、飛んできたものによる負傷、家屋の破損などの被害もあります。
○水害
台風は強い風とともに激しい雨ももたらします。大雨は河川の氾濫、堤防決壊、鉄砲水、高潮など様々な被害を発生させます。国内で最も被害が大きかったといわれる伊勢湾台風では、床上浸水157,858棟、床下浸水205,753棟の被害がでています。堤防の決壊もたびたび発生しており、国土交通省は、洪水の避難は堤防の決壊も想定して行うよう呼びかけています。洪水予報について下記に記載しておきます。
参考までに、一般的な家や人の部位の高さを書いておきます。
■一般的な家屋の高さについて。
50cm :1階の床下(床下浸水)。大人の膝くらい。
100cm:1階の床上(床上浸水)。大人の腰くらい。
200cm:1階の軒下。
350cm:2階の床上。
500cm:2階の軒下。
○高潮
高潮は水害の一種です。しかし、与える被害がとても大きいので、クローズアップして書きたいと思います。
高潮とは、海面が上昇する現象のことです。海面上昇の原因は主に2つあります。 ひとつは「吸い上げ効果」と呼ばれる、気圧の低下による海面の上昇です。海面は、気圧の変化によっても上下します。気圧が1hPa(ヘクトパスカル)下がると海面が約1cm上がるといわれています。たとえば気圧が1000hPaだった場所に台風が来て、950hPaに落ちると海面は約50cm高くなります。
もうひとつは、強風による「吹き寄せ効果」です。海水は風に引っ張られるように風と同じ方向に移動していきますが、海岸までくると、逃げ場がない海水がたまり、海面が高くなっていきます。海面が受ける風の影響は強く、風速の2乗に比例して上昇します。
つまり、海岸に吹き寄せる風が2倍になれば海面上昇は4倍になります。 加えて、湾の奥ではさらに高くなります。このような原因で高潮は発生しますが、強い台風による高潮は、まるで津波のようだと言われています。
フィリピンを襲った台風30号について、状況がまだはっきりしていませんが、高潮による被害も大きかったと言われています。報道によると、沿岸部は津波に襲われたかのような被害状況だといいます。「吸い寄せ効果」だけでも海面が1m以上上昇していた可能性があるようです。国内においても、大きな被害をもたらした伊勢湾台風の死者・行方不明者5,098名のうち、83%は高潮によるものです。
○土砂災害
台風の激しい雨は、土砂災害を引き起こします。先月、台風26号によって、伊豆大島では15日9時から16日9時までの24時間で824mmの雨が降り、土砂崩れが発生しました。35名の方が亡くなり、行方不明者が4名という被害をもたらしています。土砂災害の危険性は多くの場所に存在しており、東京23区内でも土砂災害発生の恐れがある場所は約600箇所もあります。土砂災害の危険がある場所について、各自治体でハザードマップを作成しているので、一度目を通しておくことを強くおすすめします。特に火山灰が積もっている地域は、土砂災害発生の可能性が高く、要注意です。
1時間当たりの降水量が10mm程度の雨でも長時間降り続くと、土砂災害の
危険性があります。降水量○○mmと聞いてもイメージがつきづらいかも
しれません。気象庁のWEBサイトには、雨量と災害の発生状況の関係が
以下のように書いてあります。
台風への備え
台風への備えについて調べたこと、自分で実践していることを下記に書き出してみます。
■台風に対しての備え
・避難場所と避難経路の事前確認(側溝の場所など危険個所をチェックしておく)
・非常用品の準備。
・非常食の準備。
・飲料水の準備。ポリタンクやペットボトルで水を確保する。
トイレの流し水用に浴槽に水をためておく。
・雨どい、屋根瓦の状況確認及び清掃。
・浸水対策のために側溝や排水溝は清掃しておく。
・土嚢の準備(一般家庭では、土嚢よりも水嚢の方が実用的かもしれません。
水を吸収して水嚢になる商品もあります)。
・物干し竿、植木鉢など飛ばされる可能性があるものを部屋に入れる。
(もしくは固定)
・窓ガラス飛散防止用シールを張る(もしくは内側からガムテーブを張ったり、
ベニヤ板をつけて破損時に備える)
※非常用品、非常食については、後日詳しく書く予定です。
避難について
自治体・防災機関からの情報に注意を払い、避難の指示が出たらすみやかに避難をします。防災避難情報については下記のとおりです。
避難の注意点について、下記に記載します。
・原則、徒歩で避難する。
・服装は長袖、長ズボン、手袋、雨具、ヘルメット着用。
長靴ではなく運動靴で避難。
・ガスの元栓、ブレーカーを落としてから避難する。
・状況に応じては、遠い避難所よりも近くの鉄筋コンクリートのビルなど
に避難した方がいい場合もある。
・複数で避難するときはロープをお互い持って移動する。
・道路が冠水している場合、側溝などが水没している危険性もあるために、
極力避けるようにする。
(流れがなくても30~50cmの水深があると歩行が困難となる。
杖など長い棒があると、深さをチェックすることが可能)
・危険個所を避ける(川、崖の近く、地下道など)
車による避難は危険です。車は1時間の雨量が20mmを超えると、ワイパーを使用しても見づらくなります。また、冠水した道路を走行するとエンジンが停止して走行不能になる恐れもあります。冠水道路での走行について、日本自動車連盟(JAF)がテストを行っています。その結果、水深30㎝の場合だと、セダンでも時速10~30㎞ならば走行ができたのですが、水深60cmになるとSUVでの低速走行でもエンジンが停止したとのことです。詳細は、下記JAFのWEBサイトに書いてあります。
台風災害を調べてみて
以上、台風の災害について調べてみました。台風がもたらす災害の特徴としては、災害の種類が多いことと、発生場所が海、山、川、街中など、ありとあらゆる場所で想定されることだと感じました。
1959年(昭和34年)の伊勢湾台風など、日本でも5000人以上の方が死亡・行方不明になっています。もし、先日、フィリピンを襲ったレベルの台風が上陸すれば、日本でも甚大な被害がでることが予想されます。少しでも被害を少なくするために、事前の備えは万全にしておきたいと思いました。
参考WEBサイト
Text:sKenji