新幹線を乗り継いで、宮城県仙台駅に到着。仙台駅周辺は、全くと言っていいほど、震災の影響は感じない。駅近くでレンタカーを借りる。
同行取材の井上さんの運転で郊外へ向かう。私は助手席で外の景色を見ていた。
少し走ると、今まであったビルや家などの建物はなくなり、広い野原へと変わった。
仙台駅周辺はとても発展しているが、少し行けばのどかなんだなと、この時、私はのんきに考えていた。
小学校が見えてくる。このあたりに来て、ここが自然にできた平野でないことを知る。
ここは仙台市若林区の荒浜地区。津波の被害を受けた場所だと知った。
強い津波の力で曲がった道路脇のガードレール。所々、壊れた家の基礎が残っている。
あの何事もなかったかのように見えた仙台駅のこれほど近くに、甚大な津波の被害を受けた場所があることを、すぐには信じることができなかった。
「これが津波なのか・・・」
震災という現実に一気に引き戻された。
なんて、自分は能天気だったのだろう。一瞬、ハンマーでぶん殴られたかのような衝撃だった。
車を降りて、歩いてみる。
海辺の松林は、津波でなぎ倒されている。残っている一部の松は、上部だけにわずかな葉が残り、下部には葉も枝もなかった。まるで歯抜け状態のような無残な姿だった。緑の雑草が生い茂る中、所々、津波で破壊された建物の基礎が残っている。
天気のせいなのだろうか。それとも目の前に広がる光景のせいなのだろうか。寒々しさを感じてしまう。
時折、小雨がぱらつく。
ふと、仙台駅の方向を見てみた。津波の爪痕が残る広大な野原の背後に、仙台の近代的な高層ビル群が、どんよりとした灰色の空をバックにうっすらと、そびえ立っていた。
現実とは思えないような、対照的な組み合わせの光景。まるで、砂漠の中にそびえる摩天楼のようだった。
荒浜地区
Text & Photo:sKenji