2007年3月2日。
父島南部、ジョンビーチを訪れた。
このジョンビーチから、今度はジニービーチを目指す。
ジョンビーチ、ジニービーチ
地図上だと分かりにくいが、2つの海岸が、この場所で崖を隔てて隣り合っている。
崖を隔てたジョン、ジニー
この2つは父島南部にある景勝地。
島の中心からは離れており、訪れる人も決して多くはない。
人は多くないけれど、人気のスポットである。
こう言うと、矛盾しているかも知れない。けれどジョンビーチ、ジニービーチを知る人なら、この表現がしっくりくるはずだ。
ジョンビーチ、ジニービーチは何よりも景色が素晴らしいと言われている。素晴らしいのだが、車道の終点コペペ海岸(もしくは小港海岸)から片道2時間はかかるうえ、アップダウンがあまりにも激しい。よほどの健脚でなければ、安易にチャレンジできない。
そんなトレッキングコースだ。
ジョンビーチ、ジニービーチというカタカナの名前にしても、「いかにも小笠原!」といった感じだが、これにはちょっとした伝説がある。
―――はるか昔のある日、この2つの隣り合ったビーチに、男女がそれぞれ漂着してしまったらしい。2人の名はジョンとジニー。カップルだったそうだ。2つのビーチはごくごく近いのだが、そこを大きな崖が隔てていた。まさか、ジョンが、ジニーが、崖の向こうのすぐ近くにいるなんて想像もしない。お互い相手を想いながらも、死んでいった……。
という、伝説。
それが史実なのかどうかはともかく、小笠原ファンの間ではすっかり定着し、いつしか「父島でもっとも綺麗なビーチ」と言われるようになったのだ。
ハードなトレッキングコースであることに加え、ジョンビーチからジニービーチまでは大きな崖を越えなくてはならない。
崖を越えてジニービーチへ
砂っぽい崖を這うようにのぼる。
かなり急な角度かも知れない。
島で絶滅したという、ヒロベソカタマイマイの化石がそこらじゅうに落ちていた。
砂っぽいおかげか、歩いていても実はそれほど怖くない。
ただ、歩きにくいのは確かだし、何も知らずに訪れたなら、この崖を登ろうなんて発想にはならないだろう。
砂地を越えると一転、触るもの皆傷つけそうな岩場に。
足を引っ掛けながら、用心してくだると……、
気持ちの良い海が広がる。ジニービーチだ。
小笠原の海はどこを見ても綺麗だが、特にここジニービーチは、透明度の高い薄青から、真っ青に濃い青まで、同じ「青」なのに、色みがバラエティに富んでいる。
誰もいない砂浜に腰かける。
静かと言えば静かだが、カツオドリの鳴き声やさざ波、遠くで聞こえる船のエンジン音まで聞き取れるせいか、賑やかにも感じる。
……ふと、さっき上り下りした崖の方を眺めてみた。
…………。
用心すれば、それほど難しくない崖だったと思う。
それでも改めて、
「普通、あの崖を乗り越えようとは思わないよなぁ」
と、思った。
ジニービーチの風景は最高だった。
叶うことなら、ジョンにも教えてあげたかった。
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より、陸伝いでジョンビーチからジニービーチへ行くことはできなくなり
ました。
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