2013年6月2日 宮城県石巻市
関東地方では、汗ばむくらいの陽気らしいけど、こちらはすっきり爽やかなお天気だ。というより、昼間でも少し肌寒くて、長袖の上着を持ってこなかったことを後悔しているくらい。
北東方向からの風、やませが入ってきているとのことで、最高気温でも15度前後。空には雲もかかっている。でも、雲の合間から見える空の青さが美しい。
「今日の石巻は、空が広いなあ」
と思った。広い空を写そうと、「がんばろう!石巻」看板の近くの門脇地区で、地面ギリギリにカメラを構えていたら、だたっ広くなってしまった門脇の民家やお店だった敷地のあちこちに、シロツメクサが群生のように茂っているのに気が付いた。
それはそれは、驚くような景色だったよ。
それでも、大地をぜんぶ覆い尽くすという感じではない。去年の枯草が残っているところに、数メートルくらいの丸っこい群生がぽつりぽつりと生えていて、ところどころでは群生同士がつながったり、合体したりしながら、まだら模様に被災地の地面を覆っている。
曇り空の合間から日差しが差し込んでくると、クローバーの葉っぱの緑と、白い花のコントラストがきれいだった。
写真入りの記事も、見てみてね。
被災した土地では、どうしてなんだろう、季節ごとに特有の植物が咲き乱れる。
夏のヒマワリ、秋のコスモス、ホウキギ、セイタカアワダチソウ、そして春のクローバー。昨日は見なかったけど、いわきの方ではストロベリーキャンドル(ベニバナツメグサ)もたくさん咲いていたらしい。
人が種をまいて育てたものものあるし、自然に育ったものもある。もしかしたら、町が壊されてしまったから、咲く花に気持ちが奪われるということもあるのかもしれない。
そういえば「がんばろう!石巻」看板の黒澤さんが言っていた。町並みがなくなって、広く感じられるようになった空に、ヒバリの声が新鮮だったって。すぐ近くに雲雀野という地名もあるのに、震災前にはヒバリの声を気にしたことがあっただろうかって。
跡地にはシロツメクサが繁茂し、空にはヒバリの声。ヒバリだけじゃない、日和山の方からはたくさんの種類の鳥の声も聞こえてくる。
建物がほとんどなくなって、生活する土地すら失われてしまったけれど、それでもこの場所に時間は流れ続けている。
シロツメクサが風に揺れる。ヒバリが頭上を旋回する。
時間という財産は生きている限り失われることはない。
でも、その時間をどう過ごすかが問題なんだよな、と考えさせられた。黒澤さんの言葉とヒバリの声とシロツメクサの鮮やかな色がひとつになった、門脇の空の下で。
●TEXT+PHOTO:井上良太(株式会社ジェーピーツーワン)
津波から三度目に巡ってきたこの季節。石巻市門脇周辺に咲いたシロツメクサを紹介します。