仙台市の海沿いに人気の公園がありました。
海岸公園冒険広場。
砂浜に平行する貞山運河の内陸側に造られたこんもりとした人工の丘にある公園です。
のびやかな芝生の丘の上にはカラフルで楽しそうな遊具が並ぶ一方、
どろんこ遊びや大工遊びなどなど、こどもたちが自由な発想で遊べる冒険あそび場(プレーパーク)でもある、人気の公園でした。
海岸公園冒険広場
標高は海抜15メートルほど
地図で確認すると分かるように、ここは海の本当にすぐ近くなんです。
(周囲にあった住宅の多くは撤去されていますが、海岸線の松林がなぎ倒されている様子が痛々しいです)
2011年3月11日、東北地方太平洋沖地震で発生した巨大津波が冒険広場のある荒浜を襲いました。
冒険広場には、地域の方3人とプレーパークの2人のスタッフ、そして1匹のワンちゃんと1匹のネコちゃんが避難してきていました。
津波の高さは7~8メートルでしたが、水流が直接ぶつかってくる海側の斜面では、展望台のすぐ近くまで津波が駆け上がって来たそうです。
冒険広場に逃れた人たちは、周囲を津波に囲まれて完全に孤立してしまいましたが、幸いその日のうちに自衛隊のヘリコプターに救助されたそうです。
かつて、こどもたちの声がいっぱいだった冒険広場には、こどもの姿の代わりに津波の様子を示す看板がたくさん立てられています。
現在はしぼんだまま。
こどもたちの自主性に任せて「なんでもあり!」の遊び場だった名残もあちこちに。
冒険広場そのものは、津波に耐えて残りました。
しかし荒浜の町は壊滅的な状態です。まわりには建物が撤去された平地と、廃材処理施設が広がるばかりで、人々のくらしの場は消えてしまいました。こどもたちの姿も見られません。
それでも冒険広場では震災の後、何度か臨時に開園したそうです。
クルマを使って親御さんに連れてきてもらわない限り、こどもだけではやって来ることが不可能になった冒険広場ですが、臨時開園の日にはたくさんのこどもや大人が戻って来たそうです。
同様の角度で写真を撮ってみると、建物が無くなった荒浜の町の向こうに、仙台中心部のビル街が意外なほど近くに見えました。
建物がたくさん建っていた時には分かりにくけれど、津波の危険は海岸沿いにある日本中のどの都市にもあるということ。
あそび場だけが残っても、まわりに町が無くなってしまったらこどもは帰ってこないということ。町を出て行ったこどもたちの多くが、行った先であそび場や放課後を過ごす場所がなくて困っているということ。
考えなければならないことや、具体的な行動をとらなければならないこと。いろんなことを考えさせられる冒険あそび場なのです。
●TEXT+PHOTO:井上良太(株式会社ジェーピーツーワン)
海岸公園冒険広場の指定管理者として運営を行ってきた団体のページです。海岸公園は閉園中ですが、仙台市内を中心にこどものあそび場を支援する活動を行っています。