2013年3月6日より、アルガルベ杯がポルトガルで開催されています。女子サッカーの国際大会としては、オリンピック、ワールドカップに次ぐ格付けを誇るアルガルベ杯。今回は予選Aグループ第2戦、日本VSドイツの対戦レポートをお届けします!
最強ドイツに対し、新生なでしこがどこまで食い下がれるか
FIFAランキング2位のドイツは7月のUEFA欧州女子選手権2013の前哨戦として、最強メンバーでアルガルベ杯に挑んでいる。日本のように若手を試す実験の場ではなく、現段階のベストメンバーで優勝を狙いにきているということだ。佐々木監督は「ドイツ戦は若手中心ではなく、現時点のベストメンバーで勝ちを狙う」と宣言。澤、宮間らチームの軸が不在のなか、本気のドイツ相手にどこまで戦えるのか注目された。
田中美南がFW先発、荒れたピッチコンディションに苦しむ
日本のシステムは前節と同じ4-4-2。DFは左から鮫島、熊谷、岩清水、有吉。MFはボランチに田中明日菜と宇津木、サイドハーフは左に川澄、右に高瀬。FWは大儀見と田中美南で2トップを組んだ。ロンドン五輪を経験した中堅組でスタメンを固めるという手堅い布陣。唯一のサプライズはA代表デビューとなる田中美南を先発に起用したことだ。
ゲーム序盤、日本は落ち着いた立ち上がりを見せる。ノルウェー戦のように選手の意思統一が皆無でボールの収まりどころを失うこともなく、ドイツの厳しいプレッシャーをいなすように巧みなパス回しでポゼッションをリードしていた。しかし、開始直後の大雨でピッチコンディションは大きく乱れてしまう。日本の持ち味であるパスワークとフリーランの連動でディフェンスを打開するコンビネーションプレーが完全に影を潜めてしまった。
雨水を大量に含んだピッチはボールの走りが悪くてパスが繋がらず、ピッチに足を取られたサイドバックの鮫島彩と有吉佐織は最終ラインから前方に飛び出す力を失う。2列目、3列目からのサイドアタックを攻撃の軸とする日本にとって、足が使えないのは致命傷だった。
結果的に1-2の惜敗に持ち込めたのは収穫か?
ドイツが奪った前半7分のファイストの先制点も、後半10分のマロジャンの直接FKによる2点目も、ゴール前にロングボールを放り込むパワープレーから生まれた得点だった。ピッチが大荒れの状態では、世界最高クラスと呼ばれる日本のパスワークとスピードを生かすのは困難だった。逆に中盤を省略して前線にボールを放り込むドイツの戦略はハマッたと言える。
しかし、ドイツの攻撃パターンは限られていた。個の力で日本のDFを切り裂くこともなければ、サイドからドリブルで崩して中央で勝負するシーンも少なかった。脅威だったのはドイツのセットプレーのみだと分析できる。
日本は岩清水と熊谷を中心に統率されたゾーンディフェンスが固く、前線から守備が連動して危険なスペースをカバーしていた。尽きることのない運動量と組織力なプレスでドイツに攻め手を与えなかったことは称賛に値する。ベストメンバーを揃えたドイツを相手に2-1という僅差で惜敗したのは、日本に自力がある証拠だと思われる。
大滝を投入してターゲットを増やす戦略は取れなかったか?
ピッチコンディションが大きく荒れる現象は国際試合では常に起こり得る問題だ。この試合はピッチの至る場所に水たまりが発生し、ボールが止まるエリアと極端にボールが走るエリアに分散されてパス回しが難しくなった。日本はトップの大儀見にボールが収まったとき、2列目が前線に押し上げる時間を作り出せた。しかし、日本の攻撃が組織的に連動したシーンはほとんどない。
中盤でパスが回らない場合、中盤を省略してトップにボールを放り込む作戦は有効だと思う。ノルウェー戦で巧みなポストプレーを見せた大滝麻未を後半から投入し、前線に大儀見と大滝の2人のターゲットを配置できれば、2~3列目のオーバーラップを引き出す時間が生まれたのではないだろうか。スピードのある川澄と田中美南はDFの裏へ抜け出す動きでチャンスを作っていただけに、その突破力を十分に生かせなかったのは残念だった。
センターフォワードの大儀見は大柄なドイツDFとの空中戦にも競り負けることなく、安定したポストプレーを披露。スピードと突破力を持つ田中美南と川澄奈穂美を左右のサイドハーフに配置し、前線でキープできる大儀見と大滝を中央に据えてサイドアタックを仕掛ければ、ピッチコンディションの悪い状況でも攻撃の形が明確になったのではないだろうか。
総括
2連敗したことで、優勝の可能性が消えたなでしこジャパン。今大会は若手を試す実験室という意味合いが強いので結果が出ないのは当然と言えるでしょう。次のデンマーク戦では積極的に若手を投入し、世界で戦える選手と戦術のバリエーションを増やして欲しいと思います。