息子へ。被災地からのメール(2013年1月31日)

2013年1月31日 宮城県女川町・石巻市

「口はね、食べるためだけにあるんじゃないの。しっかりしゃべらないと」

女川町の清水仮設住宅に住んでいる石田志寿恵さんが雑談の中でそんな言葉を語った。取材した話をページにレイアウトして、文章の内容や写真について相談しにおじゃましていた時のことだ。

言うまでもなく子育ての話。お前もなかなかの聞かん坊な方だから、先生とかいろいろな人に同じことを言われたことがあるだろう。「悪いことをしたらちゃんと言いなさい」という意味だったり、「いくらいいことを思っていても、口に出して言わなければ伝わらないよ」という意味だったり。でも、どちらも、人のつながりの中で、話すことの大切さを語っているわけだ。

石田さんはこんなことも話してくれた。

「震災の後、避難所にいた時には、まわりにたくさんの人がいた。それこそ赤ちゃんから幼稚園の子、小中学生、高校生、それに大人たち、お年寄りたち。いろんな人と関わったり、よくないことをした子どもや大人を叱ったりすることもあったんだけど、思い出してきたのよね。自分の子どもたちに言い聞かせてきたことを。大人って、自分の都合でそういう大切なことを忘れてたりもするのよ」

「口はね、食べるためだけにあるんじゃないの。しっかりしゃべらないと」

これも思い出したことのひとつ。いろんな人と話をして、考えを伝えて、話し合っていくことが大切だということ。

仕事の方はね、連絡先をどうするか、写真や記事の追加はどうするか、といったことをその場で相談して、その場で決めて、ほぼその場でページをアップ。ITの力を改めて感じさせられるものだった。年寄じみた言い方に聞こえるかもしれないけど、取材した内容をその場でネットに載せることができるなんて、「時代は変わった!」と興奮した。

でも、考えさせられたんだ。たしかに、ネットの力はすごい。Facebookとかは父さんもいろいろ重宝している。だけど、直接話すことにはネットとは違う力がある。

どちらかというと、インテリ系の人が多いISHINOMAKI2.0という団体は、地元の人から「パソコンばかりやってて近づきがたい」と思われているのだそうだ。ISHINOMAKI2.0の勝さん自身がそう言っていた。「何とかしないとね」って。

「たしかにパソコンやってる時間は長いけど、ぼくらがやってる町づくりという仕事は、人と会って話をして、いろいろなことを調整して、人と人がつながる新しいプラットフォームをつくること。本質はパソコンとはあまり関係ないん仕事なんですよね」

パソコンもネットも便利だけれど、だからこそ、話すこと、しゃべくることを忘れちゃいけないと思った。「大人は自分の都合でそういう大切なことを忘れてたりもする」のではいけないと思った。

取材って、というより人と会って話すのっておもしろい。脱線したように思えたところから、いろんな大切なものが掘り出されていく。最近、ネットにずっぽりはまっているお前さんも、ちょっと考えてみるといいよ。