船浮集落 - その1.「無形の価値」溢れる船浮【旅レポ】

「無形の価値」溢れる船浮

西表島・船浮集落より徒歩5分「イダの浜」 (画像:石垣島海辺.COM)

 この場所に初めてきたとき、その雰囲気に感動した。月並みな感想だが、こんな場所があるんだと思った。西表島の船浮集落は、大原、上原といった中心集落から道路が通っていない。陸続きでありながら、船でしか渡れない“陸の孤島”なのだ。 聞いたところによると船浮集落の人口は約40人。時に秘境と呼ばれる西表島だが、ともすれば船浮集落は「秘境中の秘境」だろう。西表島の中で観光ガイドにもちらっと載る程度で、一日4往復しかないバスで白浜港へ行き、そこからさらに一日3~5往復の船に乗ってようやくたどり着く。時間的な効率を考えれば、3~4日程度の観光旅行でも船浮を目指すのは容易ではないと思う。

 船浮は人が立ち寄りにくいという点は否めない。ただ、そこらじゅうにある“名も無き何か”にいちいち目を引かれるほどに、自然の豊かさに驚かされる。それは陸をのそのそと歩くセマルハコガメだったり、集落内で放し飼いにされているニワトリだったり、尻尾をぴこぴこ振りながら透明度抜群の浜で海水浴を楽しむ飼い犬だったり。何もない集落なのに、溢れんばかりの「無形の価値」があった。 船浮集落は西表島の一部だが、ほかの集落とは別の雰囲気を感じる。島には旧日本軍要塞跡がある。動物たちが自然と戯れる。それでいて人は滅多に見かけない。集落内にある看板は古びたものも多く、むしろ味わい深い。たとえば、「実は今昭和××年だよ」と言われても違和感はないはずだ。時が止まった感覚だろうか。船浮以外の集落ではそう感じることは無かった。

 小さな集落は30分もあれば1周できてしまった。中でも「イダの浜」は気に入ってしまい、気が付けばそこで3時間過ごし、おまけにちょっと寝た。たぶん僕が知る限り、もっとも綺麗な浜はあそこだ。あぁ、あまりのんびりしてられない。船の時間を逃すとバスの時間も逃すことになる。「また、来よう。」そう思って僕は船浮をあとにした。

船浮集落で放し飼いにされていたニワトリ。ほかにも何羽かいた。

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