FIFAクラブワールドカップ2012が日本で開催されました。この大会は世界6大陸における選手権大会の優勝チームと、開催国における国内リーグの優勝チームが一堂に会して『クラブチームの世界王者』を決定します。欧州からはUEFAチャンピオンズリーグを制したチェルシーが、南米からはブラジルの名門コリンチャンスが参戦します。日本からはJリーグの覇者、サンフレッチェ広島がエントリーしました。今回はサンフレッチェ広島VSアルアハリの対戦レポートをお届けします。
序盤からアルアハリのクオリティの高さに圧倒される
アフリカチャンピオンのアルアハリはクラブW杯の常連チームであり、2006年大会は3位という成績を収めている世界的な強豪クラブです。試合開始早々、アルアハリは高いテクニックと素早いボール回しで広島を圧倒します。精度の高いショートパスでゲームを組み立て、ダイレクトプレーでDFのマークを外し、好機と見れば一発のロングパスで裏を狙ったり、2列目のアタッカーがワンツーからペナルティボックスに侵入するなど、多彩な攻撃パターンで広島のゴールに襲いかかります。
初戦のオークランドシティは身体能力の高さでパワープレーに持ち込む単調な攻撃に終始していましたが、アルアハリは技術面でも戦術面でもオークランドを遥かに凌ぐクオリティを持っています。広島はアルアハリのパスワークついていけず、序盤からディフェンスラインを崩されるシーンが目立ちました。
西川の負傷退場でディフェンスに隙が生まれる
前半3分、GKの西川周作がペナルティエリア内でナギ・ギドと交錯し、顔面を打撲して負傷退場するアクシデントが発生します。守護神を失った広島は最終ラインの連携が乱れてディフェンスの安定性を失います。前半15分、右サイドを50m近くオーバーラップしたファティがアル・サイードとのワンツーからゴール前に飛び出すと、GKとDFをドリブルで引き付けて中央にマイナスのラストパスを折り返します。
ゴール前でフリーになったアル・サイード・ハムディは、左足で冷静にシュートを決めてアルアハリが先制点を奪います。広島が得意とする組織的なゾーンディフェンスは機能せず、1対1でもドリブルで振り切られる場面が多発します。アルアハリは1人が潰されても前線に次々とオフェンスのサポートが入り、守備時は全員が自陣まで引いてスペースを消し去り、広島に攻撃の糸口を与えませんでした。
セットプレーから佐藤寿人のゴールで追いつくが・・・
前半32分、広島は左CKのチャンスを得るとペナルティエリア内の混戦からDFがクリアミスし、そのボールをミキッチがヘッドで右サイドにパスを送ると、ファーポストでフリーになった佐藤寿人が右足でダイレクトシュート放ちます。スナイパーのように正確に打ち抜かれたシュートは、GKの脇をすり抜けて同点ゴールを奪います!
更に逆転ゴールを狙いにいく広島は、1トップの佐藤にボールを集めてタメを作り、MFを前線に押し上げようとします。しかし、徹底的にマークされた佐藤の足元にボールは収まらず、時折見せるサイドからのクロスボールも中央の守備を固めるアルアハリのDFに跳ね返されてしまいます。
後半12分、右サイドでボールを受けたファティが浮き球のスルーパスをDFの裏に通すと、エースのアブトレイカがこのパスに反応し、DF千葉との競り合いに勝って右足シュート!ボールはGKの足元をすり抜けてゴールが決まり、再び勝ち越しに成功します。追い詰められた広島は最後まで粘り強く攻めますが、単調なサイド攻撃と佐藤寿人を狙った縦パスをアルアハリのDFに読まれて攻撃が寸断されます。
組織力だけでは世界トップレベルには対抗できない
1-2という結果に終わり、準々決勝で敗退したサンフレッチェ広島。今季Jリーグでリーグ2位の63得点を記録した攻撃力、リーグ2位の34失点に抑えた鉄壁の守備力は、アルアハリに通用しませんでした。1-2という数字以上に力の差があったように感じます。組織力を生かしたパスワークで国際大会を勝ち抜くのは無理があります。最もプレッシャーのきついバイタルエリアを攻略する場合、DF2~3人をドリブルで引き付けるくらいの強烈な突破力を持ったプレーヤーがいなければ、攻撃のスペースは生み出せないと思います。
アルアハリは細かいパスワークを攻撃の主体にしていますが、アタッキングサードに入ると強引なドリブルで勝負をしかけてディフェンスラインを切り裂く力がありました。広島のオフェンス陣を見ると、個人の力でペナルティボックスに入っていける選手が見当たりません。劣勢時にゲームの流れを変えるには、ドリブラーやポイントゲッターとなるスーパーサブの存在が不可欠です。アルアハリにしてみれば、広島の攻撃パターンは読みやすく守りやすいものだったように見えました。
総括
準々決勝敗退ということで、非常に悔しい結果に終わりました。Jリーグのレベルは年々上がっていると言われますが、まだまだ世界レベルには遠く及ばないという事実を露呈してしまいました。サンフレッチェ広島は攻守のバランスに優れた組織力の高いチームです。今季のJリーグでは断トツのクオリティを持つチームだと思います。しかし、世界を脅かすような怖いチームではありません。次大会ではロンドン五輪代表の永井謙祐ように、破壊力のあるスタープレーヤーを揃えたチームの躍進に期待したいと思います。