しいちゃんお手製かわいい小物、売るはご主人商売上手(佐久島)【旅レポ】

佐久島発、手づくりみやげ

 東側・西側に2つの集落がある佐久島。その双方を結ぶメインの通りを西の方へ向かって歩いていると、なんだかかわいらしい看板が目に入ってきた。木の看板に風鈴、ベンチ、その日はおそらく35度近いと思われる暑さだったが、なんとも涼しげだ。思わず立ち寄ってみた。 ところが期待に反して中は薄暗い。「開いてないのかな・・・」そう思ったところでインターホンを発見。ピンポーン。・・・しばらくしてガサゴソと出てきたのは、ここの店主らしきおじいさんだった。

 ここは「しいちゃんの里」という、小物やお土産が売っているお店。さすがの暑さに加え、正午前の時間はお客さんがこないらしく、店を閉めていたらしい。確かに、夏のこの時間帯の佐久島は東側に数軒ある定食屋と海水浴場が賑わっていて、通りに人は少ない。なんだかわざわざ出てきていただいて恐縮してしまったが、ご主人は気さくに話してくれた。 見渡してみると、可愛らしい貝の置物や、手づくり感満載のストラップ、島の木や砂や貝で作ったであろう小物類など、色々と置いてある。

「見てごらん、これは全部手づくり。」と、ご主人。聞けば、これは全部、”しいちゃん”こと奥さんのシズエさんの手づくりだと言う。いやはや、手づくりだとすると、これがなかなかよくできている。しばし感心してしまった。・・・それにしても、年配のご夫婦でこんなかわいらしいお店を営業していることに、なんだかうらやましくて笑ってしまう。

アツ~いおもてなし

 時々店にも風が吹き入って、ぶら下がっている小物がコロンコロンと音を立てて揺れる。僕が時間にゆとりのある島民だったら、お茶でも飲みながらだらだら世間話でもしたくなるような、柔らかい空気が漂う。

・・・と、思ったのだが、「これは・・・ほら机の上に飾ってもいいよ。」

「これは携帯のストラップに。先にひもが付いているでしょ。」「そうそうこれが島で採れた天草。これにお水が4リットル・・・これだと4.5リットルだな。それにお酢を入れてぐつぐつやるとね。」

どこかでご主人のスイッチが入った。「ほれ、これ食べてごらん。佐久島で捕れたエビをつかったエビせん。」

「・・・っ、ありがとうございます!!」アツい・・・アツいぞ。このおもてなし攻撃・・・ッ!!

この商売上手めっ・・・。

 時間は正午前、まだここで手荷物を増やすことは考えていなかったんだけど・・・。いやしかし、わざわざ店に出てきていただいたのに、手ぶらで帰るのも今さら何だか気が引ける。「今度、ここがテレビに映るかも知れない。ついこの前取材が来てね。」

「ほら、あれがぐっさんのサイン。」「ん、まだエビせん食べるかい。」

「あ、そうそうこれがね、ほらこうやって肩たたきに使う棒。こうやって。これは値段はついてないけど、志・・・ね。お気持ちだけこの箱に入れてくれれば。」ご主人・・・この商売上手めっ・・・。僕は叫んだ。

「ところてん・・・っ、買います!!」そんなご主人にこの後の行き先や行動を伝えると、とてもていねいに教えてくれた。

「おひるねハウスには行くの?行っておいた方がいいよ。でも、その前にこの崇運寺!ここの景色がいいね。三河湾が見渡せるよ。その前に昼食はどこで食べるの・・・」 

◆◆◆ 

 昼食を済ませたあと、再び「しいちゃんの里」の前を通った。少し覗くと今度はご主人がおらず、年配の女性と目が合う。すぐにその人が”しいちゃん”だとわかった。「いらっしゃい。どうぞ見て行って・・・あ、さっき買ってくれたのね!」

「他は見ていかなくっても大丈夫?」「これからどこ行くの?おひるねハウス?地図持ってる?おひるねハウスに行くならその前に、ここまっすぐ行って左に崇運寺っていうお寺があってね・・・」

なんと・・・、説明の調子が全く一緒!! 

いや、ここまでご主人と波長が一緒とは恐れ入りました・・・。その”しいちゃん”、生まれこそ佐久島なものの、その後は本土で50年近く過ごしていたとのこと。近年になり、「島でのんびり過ごしたい」と戻ってきたそうな・・・。

でもこれって、夫婦仲が良くて初めて成せる業ですよ・・・。さすが・・・!! 

 説明を受けた地図を右手、佐久島産の天草を左手に、僕は残り半日を過ごした。

◇参考情報◇ 「しいちゃんの里」 ◆住   所・・・愛知県西尾市一式町佐久島西側

※ 佐久島の中では開店間もない新しいお店です。詳しい情報は不明ですので要問合せ。

◇佐久島の詳細はこちら◇

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