【なでしこジャパン】日本VSブラジル・・・まさかの2-0!不調なでしこに勝利をもたらした要因とは? 《ロンドン五輪》

ロンドンオリンピック開催日に先立ち、女子サッカーの試合が始まりました。今回は8月3日に行われたなでしこジャパンの決勝トーナメント一回戦。日本VSブラジルの試合を振り返ってみたいと思います!

この状態で勝てるのか?不安があった試合前

予選グループリーグF、1勝2分の勝ち点5で決勝トーナメントに進んだ日本。初戦こそカナダに2-1と勝利しましたが、その後は2試合連続のスコアレスドローという結果に終わり、チームの状態は決して万全には思えませんでした。昨年のドイツワールドカップでは、予選リーグで澤がハットトリックを挙げて得点王に輝くなど神がかり的な活躍を見せる存在がいました。国際大会で勝ち進むチームというのは、「チーム内に持っている選手がいる」「勝つ度にチームが成長している」「ラッキーボーイ的な存在がいる」など、複数のポジティブな要素が重なっている場合が多いのです。

しかし、予選の日本の戦いを見る限り際立って良い材料は見つかりませんでした。 3試合で1失点と守備こそ安定していましたが、攻撃ではなでしこらしいパスサッカーが影を潜め、決定的なチャンスにもシュートを外し、ゲームメーカーの澤と宮間の調子が上がらず、チーム全体の運度量が上がってこないなど、全体に勢いがなく、決勝トーナメントを勝ち抜ける状態ではないと判断していました。

試合序盤から攻め込まれ、ブラジルにペースを握られる

日本は南アフリカ戦からレギュラーメンバーを復帰させ、いつも通りの4-4-2という布陣で挑みました。対するブラジルは4-3-3というFWを3枚にした攻撃的なフォーメーション。クリスチアーニ、ゲーデスという高さと突破力に優れたFWを両サイドに置き、5年連続でFIFAバロンドール賞を獲得したエースストライカーのマルタを中央の1.5列に配置します。ブラジルはゲーム開始からフルスロットルで猛攻をしかけました。サイドチェンジを繰り返して日本のプレスディフェンスをかわし、高さとスピードのあるクリスチアーニとゲーデスに向けて両サイドハーフがアーリークロスを送り、競り合いから生まれたセカンドボールをマルタが拾ってドリブル突破。ディフェンスを強引にこじ開けます。

日本の最終ラインはプレッシャーに押されて引いてしまい、防戦一方の展開。個人の力に勝るブラジルの選手はDFに囲まれても一瞬のスピードとパワーで2、3人を振り切って一気にシュートまで持ち込みます。しかし、日本はセンターバックの岩清水と熊谷を中心とした粘り強い守りでブラジルに対抗。体を張ったクレバーなディフェンスでブラジルにゴールを割らせません。

前半20分から流れが変わる、まさかの2-0で日本が勝利!

日本はブラジルの猛攻に耐えると、前半20分過ぎからペースを掴みます。最終ラインを深く保ち、ゴール前に人数をかけてブロックを作ります。ドリブルで突破されてもパスで崩されてもDFが次々とカバーリングに入ることでブラジルは日本の守備網に引っかかります。日本は中盤でパスが繋がり始めると、ブラジルの浅いディフェンスラインの裏を狙ったカウンター攻撃が機能しました。前半27分、中盤の左サイドでフリーキックを得た日本は、澤が素早くリスタートしてディフェンスの裏に走り込んだ大儀見に絶妙のスルーパス。キーパーと1対1になった大儀見は冷静にゴール右隅を狙って先制点を奪います。前半、圧倒的に攻め込みながらも得点を奪えないブラジルは次第にペースを落としました。

後半28分、鮫島の縦パスを受けた大儀見が巧みなトラップでDFをかわし、右サイドに走り込む大野に左足でカーブをかけた技ありのラストパスを送ります。ペナルティエリア手前でボールを受けた大野は、体勢を崩しながらも鋭く中央に切り返してDFを振り切り、左足で鮮やかなミドルシュートを放ちます。クロスバーの下を叩いたボールはそのままネットに吸い込まれて2点目をゲット。その後、ブラジルの猛攻を最後まで耐えしのいだ日本は2-0の完全勝利。オリンピック初のメダル獲得に王手をかけました。

守備から始まるなでしこジャパン、新境地を切り開く

この試合、日本のボール支配率は36%、シュート数は10対21、コーナーキックの数も2対10と数字上はブラジルが圧倒しています。ブラジルの選手が持つ身体能力、技術力、突破力は日本を確実に上回り、個人の力だけで面白いようにディフェンス切り裂いていました。しかし何故かゴールの匂いが感じ取れなかったのが不思議です。ブラジルは日本にボールを持たされていた、シュートを打たされていたという印象しか残らないのです。

DF岩清水は「ドイツワールドカップのアメリカ戦を思い出した。攻撃をしのいでいれば必ずチャンスが来ると信じていた」というコメントを残しています。この言葉にあるように、日本はブラジルとの力関係をゲームの中で計りながら無理に攻撃に出るのを止め、あえてカウンターに徹したということになります。圧倒的に攻め込まれながらも延長後半で同点に追いつき、PK戦で勝利したドイツワールドカップ決勝のアメリカ戦。その試合を通じてなでしこジャパンは『組織的な守備』という最大のストロングポイントを再確認したように思えます。

大儀見と大野の2ゴールでツートップも覚醒

この試合で驚いたのが大儀見と大野の連続ゴール。これまで沈黙していたツートップが大一番でゴールを決めたことは今後のプラス材料になるでしょう。しかも、数少ないチャンスで確実にシュートを決めたことに価値があります。サッカーでシュートチャンスが最も多く巡ってくるポジションはFWです。それだけにFWが点を取らないとチームの得点力は大きく下がってしまうのです。

女子サッカーになるとそれがより顕著に表れます。シュートのパワーに劣る女子サッカーはペナルティエリア外からのミドルシュートやセットプレーでの得点が男子と比べてやや落ちます。だからこそゴールに最も近い位置にいるFWの決定力が非常に重要なのです。国際大会で優勝するチームは必ず1人は調子の良いFWがいるものです。この得点で大儀見と大野はストライカーとしての自信を取り戻したのではないでしょうか。

ポジションチェンジによるコンビプレーの不具合も解消されてきた

今大会に入ってオフェンスのポジションを急遽入れ替えてきたなでしこジャパン。左サイドから右サイドハーフにポジションをチェンジした宮間と、左フォワードから左サイドハーフにポジションを下げた川澄のパフォーマンスが以前に比べて落ちている印象を受けていました。しかし、この試合では中盤でこの2人が攻守に渡って上手く機能していたように思えます。テクニックとキープ力に長ける宮間は中盤でタメを作りながら速いパス回しの起点となっていましたし、好機ではゴール前に飛び出すなど運動量も豊富でした。

左サイドの川澄は不慣れな左足で無理にクロスボールを送るのを止め、抜群の運動量とスピードを生かして長い距離を走り、カウンターの起点になっていました。また、サイドからだけでなく中央からもドリブル突破をしかけ、積極的にゴール前に飛び出して第2ストライカーとしての役割を果たしていました。次戦でもこのプレースタイルを追求できれば得意のフィニッシュにも多く絡んでいけると思います。

総括

予選グループリーグでは今一つ調子の上がらなかったなでしこジャパン。しかし、ここにきて一気にペースアップした感があります。この日のようにFWがゴールを決め続けることが出来れば優勝の可能性も見えてくるでしょう。次戦は本大会直前の壮行試合で0-2と完敗したフランスが相手です。厳しい戦いが予想されますが、組織的な守備をストロングポイントにして粘り強い戦いを見せて欲しいです!

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