2012年5月26日~27日、福島市と郡山市で空間線量を測ってきました。
原発事故の前、一般人の線量限界は1時間に0.19μSv
低線量での被曝が健康にどのような被害を及ぼすか、たしかな指針がない以上、安全や危険を断定的に語ることはできません。「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」では、1年間につき1ミリシーベルト(mSv/y)と定められています。これを換算すると、1時間で0.19マイクロシーベルト(μSv/h)になります。
福島第一原発の事故を受けて政府は、1年間につき20mSvを超えなければ居住可能としています。この数値を換算すると、3.8μSv/hになります。基準とされている数値については、別のページで改めて述べようと思います。
ここでは、次の2つの数値だけ意識していただき、実際に福島市と郡山市で計測した数値をご覧いただきたいと思います。
くりかえします。
0.19μSv/h ⇒ 1年では1ミリシーベルト
3.8μSv/h ⇒ 1年では20ミリシーベルト
福島県庁の近く、阿武隈川の河原で、可愛い花のそばに線量計を近づけてみたら、数値は「2.46μSv/h」でした。
上の花のすぐ近くで、地表からの距離ほぼ0の位置では「5.82μSv/h」でした。
雨水が集まるような場所で線量が高くなると聞いていたので、河川敷への階段の下で測ってみました。数値は「4.81μSv/h」でした。
線量計を置いた場所を「引き」で撮影しました。雨が降ればたしかに水が集まりそうな場所ですが、水はおそらくさらに下方へ流れていくと思われます。
階段を上った橋のたもとの小さな緑地に福島市の看板が立てられています。「公園の利用は、1日あたり1時間程度」「利用後は手や顔を洗い、うがいを」「土や砂を口に入れないよう」。
福島県庁の向かいにある小学校のグラウンド境界付近では「0.57μSv/h」でした。
万世大路の地下道に入ると数値が急に下がりました。「0.08μSv/h」でした。
福島駅西口に設置された線量計です。数値は「0.945μSv/h」でした。
阿武隈川の河原で「5.82μSv/h」という数値を見た時には驚きました。歩きながら測っていると、さらに高い数値の場所もありました。「ここにいても大丈夫なのか、何分以上いたら危険なのか」。真剣に考えました。
県庁周辺は、小学校の側と近い数値で0.5~0.8μSv/hのところが多かったですが、数値にはかなりのばらつきがあり、1μSv/hを超える場所も少なからずありました。駅に向かって歩いて行くと何カ所か地下通路があります。地下道の入口の屋根がある場所とない場所で、ガラリと数値が変わります。地下通路の中ほどでは関東地方西部の空間線量と変わらないレベルまで低くなりました。屋根の有無が空間線量には大きく影響するようです。
数値への「なれ」の怖さ
駅の東側の繁華街に入ると、0.3μSv/hと表示されるところが出てきます。線量は地域によってもばらつきがあるのかもしれません。その時、思ったことを正直に記しておきます。「なんだ、けっこう低いじゃん」
年間積算量に換算して20ミリシーベルトをはるかに超える数値や、1マイクロシーベルト/時という数字を見慣れると、年間1ミリシーベルトを超える数値なのに「低い」と感じてしまうのです。市内を計測したのは、ほんの2時間ほどでした。そんな短い間でも、感覚が麻痺してしまうのです。実際に自分の手で空間線量を測ったことで、わかったことがあります。それは、目に見えない放射線に対して、数値の意味を考えることなく高い、低いと感じてしまう“人間の感覚のいい加減さ”です。
原発事故の以前まで、一般の人が浴びてはならないと法律で定められていた年間1ミリシーベルトを超える広いエリアがあります。多くの人々がふつうに生活しているようにも見える福島市内に、年間20ミリシーベルトをはるかに超える場所が点在しています。そして、この町には放射線に対して弱いとされる子どもたちもたくさん暮らしています。まずは、数値を見てほしいと思います。さまざまな意見や立場がありますが、日本中の人が数値を共有することが、いま必要だと思います。
文・写真●井上良太