素直に「わあスゴイや」と心がときめいてしまった。
最前までパワーショベルからバラス(砕石)を積み込まれていたダンプカーみたいな車両が、すうぅーっとなめらかに鉄道線路の上を走っていく。
滑るように走っていった道は、間違いなく線路に他ならない。ここは釜石市鵜住居地区。かつてこの場所にはJR山田線の鉄路があった。東日本大震災の巨大津波によって見る影もないまでに破壊されてしまったものの、ほぼ同じ場所で鉄道の敷設作業が進められているのだ。
明らかに、鉄道の線路に他ならない。
この車両、軌陸両用車というらしい。なんてカッコいいんだろう。
軌陸両用車の「軌」は鉄道線路のこと。「陸」は言うまでもなく陸上ということだが、実際の車両はキャタピラーを履いていて、線路の路盤だけじゃなく、その気になればどこでも走っていける。(…ただ、キャタピラーという言葉を日本語に翻訳すると無限軌道ってことなので、こちらも略せば「軌」、あるいは「無限軌」。軌軌両用とか軌無軌両用とか軌無限軌両用ではワケ分かんないから「軌陸両用」と呼ばれることになったと見受けられる)
無限軌道=キャタピラーを持ち上げたボディの下には、鉄道用の車輪。
駆け抜けていくシャーっという音まで滑らかだ。
そして、さらにスゴイことには、この車両、キャタピラーも含めた車台と、その上の搬送用ダンプ設備が分離して、ぐるりと回転するのだ。
だって、考えてもみてほしい。荷台部分を後ろにしてバラスを積み込んでもらって、シャーっと走っていった先でそのまま積み荷をダンプ(荷台を傾けて荷下ろし)してしまえば、積み荷のバラスが山になってしまって後戻りできなくなる。
そんなオバカなことにならないように、走っていった先では車体上部のみ方向転換して、戻る方向の後ろ側(分かりにくい日本語でスミマセン)に砕石をザザッーと荷下ろしできる仕組みになっているのである。
実は同様の車両は、数年前にJR石巻線、石巻・女川間の工事現場でも目にしたことがある。
けれども現在工事が進められている山田線の沿岸区間は、JR東日本が施行した後に、鉄道の運営は三陸鉄道が行うことになっている。従来、大船渡市の盛駅から釜石市の釜石駅までの南リアス線と、宮古市の宮古駅から久慈市の久慈駅までの北リアス線の間に、JR山田線の区間があって、南北が隔てられる形だった三陸鉄道の路線が、盛駅から久慈駅まで、岩手県沿岸部をほぼ縦貫することになるわけだ。
それはそれで、とてもいいことなのだろう。
だが、古く国鉄だった時代に採算性への懸念から建設が凍結され、昭和も終わりになってようやく第三セクターとして南北リアス線が開業。しかしその後も赤字続きだったこの路線。
線路工事を見守る監督さんたちの後ろ姿に、いくばくかの憂いが感じられるのは気のせいと言いきれるものなのか、どうなのか。
カッケー工事車両とそこにある現実のギャップに、何かつぶやかずにはいられない光景ではあった。
でも——、それだけでは足りない。
しかし——、鉄道開通に向けての工事は地元の人たちにとっても嬉しいことだろう。
それでもなお——、それだけではないこと。
見過ごすことのできない状況があった。