大島行きフェリーのお土産は、海の市で買ったカツオ。観光名所の魚市場には観光客用特別価格の所も少なくないが、気仙沼の海の市場はとてもリーズナブル。購入したカツオのサクはなんと一人前100円ほど。
地元で活動しているボランティア団体の事務所に持っていったら、その団体の事務所がある仮設住宅の周辺にはシソがたくさん自生していて、いままさに花穂のまっさかり。
料理上手のスタッフがカツオのサクをお刺身に仕立て、仮設住宅に自生する穂ジソをあしらえる。カツオのたたきの添え物といえばミョウガやショウガや小ネギが定番だが、穫れたての穂ジソの香りと鮮やかな緑もなかなかのもの。
たれは気仙沼大島産と熊本産のゆず醤油2品と、気仙地方特産八木沢商店の奇跡の醤。
被災地ならではの…という言い方は語弊があるものの、三陸特産と言い切ることもできない。やはり被災地だからこその一品。大島フェリーに乗船した思い出話とともに、というか美味しい地酒、そして地域の人たちとかかわり合ってきた人たちの思い出話とともに、至高の美食と語らいのひと時を過ごしたのだった。
カツオは気仙沼産。穂ジソは仮設住宅の通路際に自生していたもの。つけだれは気仙沼大島のゆず使用のカネダイ「ゆずヶ島」、九州産ゆず使用フンドーダイ「ゆずぽん酢」、あまりに旨味成分が多いということで研究用に大学に残されていた麹を元に大津波後に復活させた八木澤商店「奇跡の醤」。お酒は気仙沼の「陸前男山」と陸前高田の「酔仙」いずれも本醸造、それから男山本店一押しの「蒼空伝」。そして、美味しくてふくよかな時間をかもし上げたのは、震災後ずっと陸前地方を見つめ、関わってきたボランティア団体の皆さん。
その場所に行って初めて分かる美味しさがある。その場所で生きている人たちと語らうことで深まっていく味わいがある。
東北に美味しいものがたくさんあるのは、天の恵みに相違ないとそう思う。