最初の地震から6日目、熊本から東北の友人に連絡した時、熊本弁で「がんばろう」って何て言うのかと訊かれて即座に答えることができなかった。同じ九州人なのに。
[熊本大地震]がんばろう!を言わないのが東北の教訓?
東北の友人は熊本の地震のことが東北の人たちの間でずっと話題になっているのだと言った。テレビや新聞を見ていて「東北の教訓が活かされていないみたいだ」という話になるんだ、職場でもどこでも。
5年前に大変な経験をして、いまもなお厳しい状況、苦しい思いが続いている東北。もう誰にも二度と同じ気持ちを経験してほしくないと希っている東北の人たちにとって、熊本地震のニュースはつらいものなのだ。同じニュースから読み取れること、感じ取れるものが大災害を経験していない自分たちとはそもそも違うのかもしれない。
地震の直後から物資はそれぞれの集積場所までは届けられているし、電気の復旧は早かった。避難所にはウォーターサーバーまである。初動は早かったと思うと、熊本入りした最初の頃の印象を伝えたが、東北の友人は繰り返した。「そういうことではなくて、やはり教訓は活かされていない感じだ」
そんな話の後で、熊本弁でがんばろうって何て言うのか尋ねられた。熊本入りして渋滞の中で聞いていたNHKラジオ第一放送では、「被害に遭われた方に気安くがんばろうと声を掛けないようにしたい」という内容のメッセージが繰り返されていた。東北の大震災の後、「がんばろうと言わないで」という声が上がったのは、1カ月後だったか3カ月後だったか。
がんばろうと言わないという一事については少なくとも東北の教訓は活かされている。なんだか皮肉な話のようにも思ったのだが、そのことを東北の友人に伝えたら、こんな言葉が返ってきた。
「口に出さなくても、こころの中で思えばいいことだろう」
熊本弁のがんばれは即座に思い浮かばなかったが、大分弁でがんばれは「がんばれ」だと思うと告げた後、ネットで調べて思い出した。そうだ、「がまだせ」だった。
数日後、ボラセンの事務所で立ち話ならぬ座り話をした帰り際、握手してがんばって下さいと言ってしまった後、「あ、がんばれって言わない方がいいんだろうけど」と先の東北の友人との話を紹介して、あらためて「こころの中で、がんばってと念じています」と伝えた。ボラセンのEさんは、ありがとうございますと小さくガッツポーズを返してくれた。