最初の地震から10日目の風景。撮影場所は福岡県北九州市小倉南区のコンビニエンスストア。さすがに熊本県内ほど極端な物不足ではないものの、飲料水の棚を中心にスカスカが目立っていた。
[熊本大地震]被災地も隣県も苦しくなる物流の停滞
東日本大震災の後、物資が底をついたのは被災地だけでなかったことを思い出した人も多いだろう。ミネラルウォーターのペットボトルは関東地方でも入手困難になった。乳幼児がいる家庭に東京都がペットボトルを配布するという事態にもなった。水だけではなく、多くの商品が品薄になった。入荷薄になったのは飲料や食品だけでなく工業製品も同様だった。部品が届かないからクルマの組立ラインが止まった。レジスター用の感熱紙の工場が被災してレシートが出ない事態になった。大きな災害でひとつの地域が大きな被害を受けると、日本中の物流と流通が深刻なダメージを受けてしまう。熊本地震でも同じことが起きた。
トヨタなどの自動車会社や電気機器関係のアセンブリメーカー(組み立てメーカー)で生産の停止が続くのは部品の流通が滞っているから。流通とは材料や部品を作って、運んで、組み立てて、消費者まで届ける全体の流れのことだから、その中ではモノを運ぶトラック輸送の役割は大きい。そのトラック輸送が熊本地震では寸断された。生産して大メーカーの流通が滞るくらいだから、生活を支える流通も影響を受けてしまう。
たとえば鹿児島では、ボランティアが熊本や大分支援のための物資を集めようとしてもほとんど手に入らないらしい。その話を聞いて、鹿児島の人たちが苦労されていることに初めて気付いた。手に入らないのは熊本や大分のための支援物資だけではないはずだ。物流の動脈が九州の真ん中あたりで西も東も途絶えててしまっていたのだから。
そんな中でも何とかしたいと動いている人が鹿児島のみならず、九州各地や全国にいることを私たちは覚えておきたい。たとえニュースに取り上げられることがなかったとしても。
最初の地震から8日目の話だが、大雨から住居を守るためのブルーシートが必要との熊本からのニーズに応えようとしていた福岡の知人が、「ホームセンターは品切れで集めることができなかった。知り合いの業者の人に相談して、使用中のものを譲ってもらった」と言っていた。
地震で屋根瓦は落ちてしまったけれど、建物の損傷はそれほど大きくないから、避難所には行かずに建物のなかで過ごしている人もたくさんいる。これもあまり報道されないことではあるけれど。
私も体拭きシート(大判のウェットティッシュ)や水の要らないシャンプーを北九州市内で探してみたが、ホームセンターの震災関連グッズ売り場は、超高価なグッズ以外は「SOLD OUT」だった。震源から直線距離で約120kmの北九州市でも、震度は4ながら食器棚の中の食器が破損した家があったという。危機感を持った人々が防災グッズを買い求めに走るのも当然だろう。
「日頃からの備えが大切だ」なんて心遠いことは今は言いたくはない。災害なんてものは、「大丈夫だろう」と思って備えない人たちがたくさんいる中で起きるものだと思うからだ。だから災害が発生すると短時間でストックは枯渇する。同時に物の流れが麻痺して外からの物は入らなくなる。
大きな災害が発生すると日本中で物の流れがストップして、日本中で物不足が発生するということを、まずは忘れないことだ。忘れさえしなければきっと、九州の教訓も東北の教訓も同じく将来に活かされるはずだと信じたい。