石巻市を流れる旧北上川のほとりに、物見ヤグラのようなものができていた。
場所は旧北上川の中洲、中瀬と市街地の南にある日和山の中間あたり。ほんとに川のすぐ近くの空き地の中。
近づいてみると、立て看板が「登ってみよう」と誘っている。
お言葉に甘えて登ってみると、石ノ森萬画館の宇宙船のような建物が間近に迫る。川の護岸の工事が進んでいる様子も見て取れる。
そしてそのすぐ隣には集合住宅の建築現場。クレーンのタワーの高さから、そうとう大きな建物になるに違いない。(写真は1月のものだから、さらに巨大な姿を見せていることだろう)
ヤグラの上には「堤防幅6.0m」と記された大きな矢印。添えられたイラストを見る限り、堤防幅6メートルというのは堤防の底部の幅ではなく、堤防の上につくられる道の幅のことらしい。
繰り返しになるが、ここは海岸線ではない。旧北上川の河口にかかる日和大橋から直線距離で1.5kmも離れた場所だ。しかし津波は川を遡る。東日本大震災の津波では、石ノ森萬画館の周りにあった建物も、堤防建設予定地の内側の地域も、それどころかかなり離れた石巻駅周辺にまで被害は及んだ。(石巻市の東側の運河を遡った津波は、JR仙石線よりも北側の市街地をも水没させた)
津波から街を守るためには、海岸線の防潮堤だけでなく河川の護岸にも高い堤防が必要になる。
予定されている堤防は地上から4m近くありそうだ。
堤防高さと記されたラインにそって、川岸に堤防がつくられるのを想像してみる。おそらくヤグラに登るための階段と同じくらいの幅の堤防になるだろう。川の隣に建設中の集合住宅の1、2階あたりは堤防より低くなる。さらに、川には橋を掛ける必要があるが、新しく造られる橋は堤防を乗り越えるだけの高さに造らなければならない。すると橋につながる道路も高架になって、町中に向かって日陰をつくることになる。
被災した建物の撤去が進んで平地になった旧北上川の川岸の光景。これから堤防が造られていくに従って、川辺の景色も大きく変わる。川と親しんできた石巻の町の文化も様変わりしていくかもしれない。
東日本大震災から5年。これから変わっていく景色を想像すると、復興はまだまだ道半ばであることを思わずにはいられない。