ピラミッドを見ると夜行列車でアスワンに移動してアブ・シンベル神殿を訪れました。そして次に行ったのがその昔、テーベ――現ルクソール――と呼ばれていた街です。ここは遺跡のオンパレード。まさに人類の遺産とも言える貴重で見応えのある史跡がごろごろあります。
テーベについて
テーベは古代エジプト文明の中王国・新王国時代に都が置かれていた都市です。最盛期には100万人に近い人が住んでいたといいます。街には世界一の長さを誇るナイル川がゆったりと流れています。川を挟んで西側は「死者の都」、東側は「生者の都」と呼ばれ、それぞれに見どころがあります。
ルクソールと呼ばれるようになった現在も市街地はナイル川東岸にあります。私もここに宿を取ってルクソールを観光していました。
「死者の都」で印象的だったのは「王家の谷」
死者の都では「ハトシェプスト女王葬祭殿」や「王妃の谷」、「メムノンの巨像」、「メディネト・ハプ」などの遺跡を見て回りましたが、一番印象的だったのはなんと言っても「王家の谷」でした。
王家の谷は旅行に出る前から楽しみにしていた場所。まず最初に向かうことにしました。
死者の都にある遺跡は点在しており、歩いて回るのは大変です。そのため、移動手段はレンタル自転車です。
宿の近くで自転車を借りると、いざ死者の都へ。都はナイル川を挟んで対岸にあるので、自転車と共に渡し船に乗ります。
川を渡ると、自転車に乗ってハトシェプスト女王葬祭殿へ行きました。王家の谷はこの葬祭殿の背後にそびえる丘陵の裏側にあります。葬祭殿に自転車を停めるとそこからは歩いて丘を越え、歴代のファラオたちが眠っていた谷へ入ったのでした。(※王家の谷まで車で行ける舗装された道路もあります)
王家の谷はその名の通り、新王国時代のファラオ数十人が埋葬されていた場所です。墓の数は60以上。黄金のマスクで有名なあのツタンカーメンもここに眠っていたのです。
谷は草木が生えていない荒涼とした丘陵に囲まれていることもあってか、「死者が眠る秘密の谷」といったミステリアスなロケーションです。
公開されているお墓は10以上。1回の入場料で入れる墳墓は3つで、観光客は好きな場所を選んで見学します。ただし、ツタンカーメンの墓だけは特別。別に入場券を買い求める必要があります。
私は5つのお墓に入りました。そのなかで印象的だったのは、やはりツタンカーメンです。大きさなどの観点から見ればもっと見応えのあるものは他にありました。しかし、以前から見たいと思っていたこと、盗掘の被害にあっていないこと、そしてカイロにあるエジプト考古学博物館で事前に黄金のマスクや副葬品などを見ていたことなどもあり、思い入れが強かったのです。
美しい壁画を前に考古学博物館で見たものや子供の頃に読んだ「ツタンカーメンの呪い」の話など様々なことに思いを馳せていました。
(※ちなみについ最近、ツタンカーメンの墓の奥に隠された部屋がほぼ確実にあることが新たにわかったそうです!)
王家の谷
「生者の都」で印象的だった場所は「カルナック神殿」
「生者の都」の主な見どころはカルナック神殿とルクソール神殿です。いずれも必見スポットですが、特に忘れることができないのはカルナック神殿の大列柱室でした。
大列柱室にはまるで縄文杉をイメージさせるような大きな石の柱が134本もあります。それは圧巻という一言で済ませることができない空間でした。巨大な柱が建ち並ぶ部屋に身を置いているとまるで時間を遡り、古代エジプトにいるような感覚を覚えてしまったのです。それはとても心地良いものです。この大きな大きな石柱の基礎に腰をおろして柱にもたれ、1時間以上、ぼーーっと浸ってしまっていたほどでした。
今思うと貴重な人類の遺産に座るなどというのは恐れ多い上に、遺跡の保存という観点からも問題があったと思います。しかし、それほど遺跡との垣根がなく自然にその場所にあったことが、あのような感覚にさせてくれたように思います。
カルナック神殿
ルクソールは特に歴史、遺跡好きにはたまらない場所。「死者の都」、「生者の都」それぞれのエリアを少なくとも1日づつはかけて見学したいところです。カルナック神殿や王家の谷を始めとした遺跡を見て回れば、きっと古代エジプト文明に思いを馳せて楽しむことができると思います。ルクソールは、カイロと共にぜひ訪れておきたい古代の都です。