昨年10月に公開されたアニメーション「戦争のつくりかた」がたくさんの人たちの間に静かに広がり続けている。戦争法案が可決・成立した後も、人から人へ手渡されて、すうっといろんなところへ浸透し続けている。
「戦争のつくりかた」アニメーションプロジェクト-What Happens Before War?-
「戦争のつくりかた」という絵本を知っていますか?
この絵本は、2004年、日本が戦争へと近づいていくのではないかと気付いた人たちによって制作されたものです。この絵本をいま開くと、現在の日本や私たちの日常がその絵本に描かれている姿へと日々近づいているように思えます。
戦後70年間、直接は戦争に関わってこなかったこの国は、これまでより遥かに「戦争ができる国」に近づいてしまっているのかもしれません。
これは日本の映像やアニメーションの作家たちが集まり、新たに戦争の悲しみと不条理を繰り返してはならないと考え、この絵本をアニメーション短編映画にしたものです。
原作である「戦争のつくりかた」は、2004年の小泉政権下、イラク戦争への自衛隊派遣に危機感を覚えた市民グループがつくった絵本(発行はマガジンハウス)。それから11年後、絵本をアニメーションにしたのはアーティスト集団「ノディン(NOddIN)」。アニメ作家や広告映像の作家たち40人がリレー方式で7分半の作品に作り上げたという。
さまざまなアーティストの手による映像がつなぎ合わされて、戦争をめぐる一編のものがたりとして完成していることには驚きすら感じる。
語られる言葉にこころが揺さぶられる。
なんかへんだな、と思っても、「どうして?」と聞けません。聞けるような感じじゃありません。
いまの日本がアニメに描かれた国に近づいているのではないかという疑念を、否定することができない苦しさ。
さあ、これで、わたしたちの国は、戦争できる国になりました。
政府が戦争すると決めたら、あなたは、国のために命を捨てることができます。
政府が「これは国際貢献だ」と言えば、あなたはそのために命を捨てることができます。
戦争で人を殺すこともできます。
おとうさんやおかあさんや、学校の友だちや先生や、近所の人たちが戦争のために死んでも、悲しむことはありません。政府はほめてくれます。いいことをしたのですから。国や「国際貢献」のために。
人のいのちが世の中で一番たいせつだと、今まで教わってきたのは間違いになりました。一番大切なのは、「国」になったのです。
もしあなたが、「そんなのはいやだ」と思ったら、お願いがあります。ここで見たことがひとつでもおここっていると気づいたら、おとなたちに言ってください。「たいへんだよ、なんとかしようよ」と。おとなは「いそがしい」とか言って、こういうことになかなか気づこうとしませんから。
わたしたちは、未来をつくりだすことができます。戦争しない方法を、えらびとることも。
毎日新聞の記事によると、プロジェクトの呼びかけ人である丹下紘希さんは、「『戦争のつくりかた』は平和の作り方」と話しているという。人にはいろいろな考えや立場はあるけれど、戦争はいやだという気持ちではひとつになれるはず。ひとりでも多くの人に見てもらいたい作品だ。
ご紹介の締め括りに「ノディン(NOddIN)」という名前について。
NOddIN
日本をひっくり返して見てみよう。これは日本のフィルムメーカーからの提案です。NOddINは組織名ではありません。NOddINは、今までと違う視点を持って生きていきたいと思う心の集まりです。
「NOddIN」をひっくり返すと、あ、ほんとだ「NIPPON」になる。