廃炉の過程で日々大量に出てくる保護着など衣類、工事資材などの廃棄物を減容するために建設された雑固体廃棄物焼却設備の運用に関する資料が発表された。これまでの発表内容よりも詳しいこの資料は、福島県および関係13市町村によって構成された「福島第一原子力発電所の廃炉に関する安全監視協議会」の第41回資料として公開されたもの。
雑固体廃棄物焼却設備の設置場所
設置場所は5,6号機よりもさらに北の「5/6号機北側ヤード」。設備が納められた建屋は原子炉建屋に匹敵する大規模なもの。さらに設置場所は明言されていないが、今後も新たな焼却設備を増設することが赤字表記されている点は注目だ。
設備の構成
これまで発表されてきた資料にあった設備構成図に加えて、各モジュールの機能の解説と施設のパース図が掲載されている。
設備全体としては、ロータリーキルン式の焼却炉で時間を掛けて完全燃焼した上で、ダイオキシン類を分解するための二次焼却器を通した上で冷却し、バグフィルターに送る。焼却炉、二次焼却器、バグフィルタから回収された焼却灰はドラム缶で保管。排ガスはバグフィルタとHEPAフィルタの2種類のフィルタで微粒子を回収した上で、排気筒から外部に放出される。
設備概要(2/3)文中にある「除染計数・DF」は処理前のダストの量を処理後のダスト量で割ったもの。つまり、DF=10はダスト量を10分の1に下げることを意味する。
2種類のフィルター
バグフィルタのバグは「BAG」のこと。バグフィルタ内部には繊維製のバッグが多数設置され、袋の外から中に向けて燃焼ガスが流れる。バッグの外側に溜まったダストは、定期的に内側から圧縮空気で落とす仕組み。
排ガスフィルタ(HEPA)フィルタは、3ミクロン程度までのダストを捕捉する能力があるフィルタで、家庭用の高性能な空気清浄機のほか、半導体製造などのクリンルーム等でも使われるフィルタらしい。
外部への放射能の影響の見積もり
雑廃棄物焼却炉建屋から直接出る放射線と、大気等に反射して降り注ぐスカイシャイン線と、排気ガスに含まれる放射能を合算して見積もっている。
建屋内では焼却前に廃棄物の分別が行われるとされる。分別作業での放射性物質の飛散も考慮する必要がある。また焼却灰をドラム缶に詰める作業でも放射性物質が建屋内に飛散するおそれがある。雑廃棄物焼却設備建屋内部のクリーン化がどのように行われるのか、この資料からは読み取れない。
運用開始は3月中を予定
現在はホット試験が行われている段階。この資料の中の数カ所に「汚染された実廃棄物の焼却は行っていない」と記載されていて、実際の廃棄物を使うはずのホット試験がなのになぜかと不思議に思っていた。上記のスケジュールを見ると、この設備の場合、ホット試験には実際の廃棄物を使わない段階と使う段階があり、汚染を伴う実際の廃棄物の燃焼試験はB系で2月25日、A系では28日からで、本格運用開始時期は3月中を目指しているということのようだ。
この資料には他に、排気中の放射線をモニタする設備、廃棄物を詰めている装備品用コンテナの線量、焼却灰の取扱い、排ガス冷却器からの水漏れインシデントの対応、測定データの公表頻度についても記載されている。
「雑」廃棄物という名称からは、大した汚染物ではないというイメージをいだいてしまいそうだが、焼却される廃棄物は1kg当たり24,000,000ベクレルに上る(表記ミスであってほしいが…)。これを燃焼によって減容するわけだから、排出される焼却灰の線量は天文学的数字に近づく可能性が高い。焼却設備建屋内でも焼却灰の保管施設内でも、取扱いには万全を期してもらいたい。また、この建屋内の作業環境は極めて厳しいものになることも予想される。作業者の安全確保には絶対にミスのない対応が行われると信じている。