修理が必要な橋など1万カ所以上

12月2日、笹子トンネル天井板落下事故から3年が経過した。2012年12月2日午前8時過ぎ、突然崩落した中央高速笹子トンネルの天井板に巻き込まれて9人の方が亡くなった大事故だった。落下した天井板は270枚にのぼったという。

亡くなった方々の冥福を祈るばかりだが、犠牲になった人たちの誰が高速道路のトンネルの天井が突然崩れ落ちることを想像できただろうか。まさに「まさか」の事故によって突然、多くの人々が命を失うことになったのだ。

事故の原因は設計や施工方法の問題、設備の老朽化、点検の不備などさまざま取り沙汰されたが、最終報告書でも原因は複合的とされ、こうすれば事故は防げるという明確な指針が示されたわけではなかった。

事故から3年となる12月2日、読売新聞が伝えた記事によると、国や自治体が行っている道路の橋やトンネルの点検結果によると、橋など「補修が必要」な施設は1万1164カ所に上るという。

記事の元データは国交省が11月に発表した「道路メンテナンス年報」と考えられる。橋やトンネル、道路付属物についての点検状況をまとめたこの資料によると、全国の橋梁約72万橋のうち、2015年3月までに点検が行われたのは約6万橋だという。

橋もトンネルも時間経過による劣化が心配されるから、古いものから点検を行うという方針だが、72万もある橋のうち約6万という実績は何とも心もとない。

国土交通省は道路管理者の約7割が都道府県や市町村といった自治体であることが、点検が進まない背景にあると指摘している。しかし管理者が国でも地方自治体であろうとも、生活道路の橋やトンネルで老朽化等による破損が発生すれば、笹子トンネルと同様に「まさか」の大事故につながり兼ねない。読売新聞が伝える1万1164カ所を全国の自治体の数1,741で割ると、1つの市町村あたり約6.4の危険箇所があるという計算になる(荒っぽい計算だが)。自分が住んでいる市町村に、平均6カ所以上の落とし穴があるとイメージすれば状況の逼迫度が伝わるだろうか。

予算に乏しい自治体に対しては国の支援をしてもらい、点検を進めるとともに必要な補修を速やかに施してほしいのはもちろんだが、橋だけでも全国に72万もあると聞くと若干気が遠くなる。

指摘するまでもなくコンクリートには寿命がある。かつては30年という説が一般的だった時代もあるが、最近では用途によって40年とか65年などとされている。しかし日本のインフラの多くが戦後、それも高度成長期に集中的に造られたことを考えると、多くの建造物が一どきに劣化し寿命を迎え、崩壊事故が相次ぐことも想定しなければならない。

なにしろ明治時代に造られたコンクリートの橋脚でいまだに現役のものがある一方、山陽新幹線は開業から23年後の阪神淡路大震災でせん断破壊してしまった。必ずしも新しければ大丈夫とは言えないし、鉄筋の数の不足やこのところ大問題となっている基礎杭のように設計施工の不手際についても考えておかねばならない。

建物やインフラは大丈夫という「安全神話」についても考えなおす必要があるのではないか。道路やトンネル、橋などだけでなく町には多くの建造物があり、それぞれが特有のリスクを抱えている。

脆弱化した身近な建築物が災害にさらされた時、どんな被害が生じるかという問題も個人レベルで理解しておいたほうがいいだろう。自宅の耐震や防火はもちろん、近所にあるブロック塀や電柱、道路標識などがどんな構造で、どんな危険が潜んでいるか、チェックしておく必要がある。たとえばブロック塀の多くは接着のためにモルタルが使われている程度で、鉄筋が入っていても強度は低い。レンガ積みの塀や門柱の倒壊は関東大震災でも問題になっている。電柱は基礎無しでただ穴に埋められただけのものが多い。行先案内板のような大型の道路標識は多くの場合基礎工事が行われているが、パネル部分が落下するリスクはゼロではない…などなど。

ただ漠然と「安全だろう」と思い込んでいたのでは、命を守れない時代すでに到来しているのかもしれない。