【全文掲載】8月30日国会前デモでのSEALDs関西・寺田ともかさんのスピーチ

いつの日か、ここから、今日、この、一見絶望的な状況から始まったこの国の民主主義が、人間の尊厳のために立ち上がるすべての人々を勇気づけ、世界的な戦争放棄に向けてのうねりになることを信じ、2015年8月30日、私は戦争法案に反対します。

8月30日、国会前デモ。国会周辺に無数に設置された同報スピーカーから、SEALDs関西の彼女の声が流れてきた。7月15日、「国民主権も基本的人権の尊重も平和主義も守れないようであれば、あなたはもはやこの国の総理大臣ではありません」とスピーチして注目されたSEALDs関西の寺田ともかさんの声だった。国会議事堂周辺の数十万人が彼女の言葉に耳を傾け、そして心を揺さぶられた。

こんにちは。大阪から来ました寺田ともかと言います。よろしくお願いします。

私たちはいま、こみ上げてくる怒りや衝動を、肉体的な暴力や一時的な快楽でごまかすことなく、言葉と不断の努力で変えてここに集まっています。

安倍首相、私たちの声が聞こえていますか。
この国の主権者の声が聞こえていますか。
自由と民主主義を求める人たちの声が聞こえていますか。
人の命を奪う権利を持つことを拒否する人間の声が聞こえていますか。

先週テレビで国会中継を観ていたら、イラク戦争での米軍の戦争犯罪について、安倍首相が質問を受けていました。米軍が民間人の家に立ち入り、3歳の子供や生後5カ月の赤ちゃんを含む無抵抗の11人を銃殺したことを。子供たちが通う学校を米軍が占領し、それだけはやめてほしいと非暴力のデモを行った市民に対して、米軍が直接銃を向け次々に射殺したことを。ファルージャ総攻撃では、息をしているものは皆殺せとの指令のもと、女性も子供も家畜も助けに来た救急隊員も白旗を握りしめていた少年でさえ皆殺しにされたことを。これらの米軍の行為は戦争犯罪ですよねと、山本太郎議員に問われた安倍総理は、これに答えることができませんでした。事実確認ができないので戦争犯罪だと断定することはできないという理由でした。

だったら私が代わりに答えます。イラクでの米軍の無差別殺人は戦争犯罪です。

私は、この法案が通ることによって、こうした殺人に日本が積極的に関与していくことになるのではないかと、本当に居ても立ってもいられない思いです。

すべての命には、絶対的な価値があり、私はそれを奪う権利も、奪うことを許す権限ももっていません。なぜなら、いくら科学技術が進歩しても、私たちは死んだ人を生き返らせることはできないし、奪った命を元に戻すことはできないからです。

今この法案を許すこと、それは私にとって、自分に責任の取れないことを許すということです。それだけは絶対にできません!

私はこの国の主権者であり、この国の進む道に責任を負っている人間の一人だからです。

70年前、原爆で空襲でガマの中であるいは遠い国で餓死し、失われていったかけがえのない命を取り戻すことができないように、私はこの法案を認めることによって、これから失われるであろう命に対して責任を負えません。

私の払った税金が、弾薬の提供のために使われ、遠い国の子供たちが傷つくのだけは絶対に止めたい!

人の命を救いたいと自衛隊に入った友人が、国防にすらならないことのために犬死にするような法案を絶対に止めたい!

国家の名のもとに人の命が消費されるような未来を絶対に止めたい!

敵に銃口を向け、やられたらやるぞという威嚇をするのではなく、そもそも敵をつくらない努力を諦めない国にいたい!

平和憲法に根ざした新しい安全保障のあり方を示し続ける国でありたい!

私はこの国に生きる人たちの良識ある判断を信じています。国民の力をもってすれば戦争法案は絶対に止めることができると信じます。

いつの日か、ここから、今日、この、一見絶望的な状況から始まったこの国の民主主義が、人間の尊厳のために立ち上がるすべての人々を勇気づけ、世界的な戦争放棄に向けてのうねりになることを信じ、2015年8月30日、私は戦争法案に反対します。

ありがとうございました。

引用元:SEALDs関西・寺田ともかさんのスピーチ | 2015年8月30日国会前デモ

私事だが――。
国会正面の群衆を離れ、議事堂周辺をぐるりと回ってみようとしたところ、歩道はどこも人で溢れ、警官は横断歩道などをバリケードで封鎖。国会方面から出ていく人は通すが、国会に向けては進ませない措置を執っていた。国会正面を離れてしまったことを後悔したが、バリケードを突破するわけにも行かない。国会図書館の横の道から三宅坂に下り、隼町から戻ろうとしてダメ、平河町の交差点から国会方面に進もうとしてやはり封鎖されていたので、日枝神社から迂回してみようと雨の中を平河町の交差点付近に戻ってきたところで彼女の声が聞こえてきた。立ち止まって聞き入った。

多分に扇情的な内容である。センチメンタルと言ってもいいかもしれない。しかし、人間は感情によって生きる。いくらリアリストと自称する人々から日本の周辺の安全保障環境の変化と危険についてレクチャーされて、それを理解することができたとしても、だからといって他国の戦争犯罪に加担するために、自分の友人たちを海外に送り込み、「絶対的な価値がある生命」を奪ったり奪わせたりすることが許されるはずがない。自衛隊員の友人たちの顔が思い浮かんだ。東日本大震災の被災地で地元の人たちが涙を流して感謝した自衛隊員たちのことを思い出した。彼らに人殺しをさせるような国になってはならない。平和国家である日本の武力組織である自衛隊は、世界のすべての生命と未来を守るための存在だからだ。

彼女がスピーチを終えた後、いったいどれくらいの人々が、この国の法律をつくる場所である国会議事堂の周辺で、彼女と同じ宣言をつぶやいたことだろう。

「2015年8月30日、私は戦争法案に反対します」

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