今月19日、東京都神津島村にある天上山に登ってきた。あいにくの天気ではあったものの、日本アルプスを思わせるよう光景など、天上山はいくつもの魅力を持った山であった。
天上山について
天上山は伊豆七島のひとつ神津島の最高峰である。神津島は東京から南に約180kmの所にあり、島の周囲は約22km。年間降水量が2,500~3,000mmと多く、水が豊富なために多くの植物が生育している。
山の標高は572m。838年、大規模な噴火によって生成された火山であり、全国に47ある常時観測火山のひとつである。
天上山は一年を通して花を楽しむことができ、「花の百名山」にも選ばれている。標高600mにも満たない低山ではあるものの、火山特有の土壌や強風が吹きつけるために山頂付近には高い樹木が生えておらず、さながら森林限界線を越えた北、南アルプスような光景が広がっている。広くなだらなか山頂には、池や表砂漠、裏砂漠と呼ばれる荒涼とした地帯が点在している。
山頂への登り口は黒島登山口と白島登山口の2ヶ所。十合目までの標高差が約300m~350mほどとそれほどないことから、多くの人が楽しむことのできる山である。
今回、私は黒島登山口から登り始め、山頂に点在する池や砂地地帯を巡ったのち、白島登山口に下山した。
天上山登山レポート
海から出発し、黒島登山口を目指す。天上山の頂上付近は厚い雲に覆われている。雨が降っていないことを祈りつつ、登山口に向かう。
登山口までは舗装された道路を歩く。途中、登山道がある山腹が見える。急な斜面ではあるものの、山道はつづら折りに造られているので、見た目ほどの傾斜のきつさはなさそうだ。
黒島登山口に到着。入口には登山届を記入するノートや無料で借用できる木製の杖などが置かれている。山登りの届け出をして出発。登山口の標高はおよそ185m。
黒島登山道は登り始めから眼下に神津島の集落や海を見ることができ、気持ちのいいルートである。
わずか200mほどの標高にも関わらず、生えている草木の背丈は低く、森林限界線の上にいるかのような錯覚を覚える。天上山が持つ魅力に登山開始早々、驚いてしまう。
7合目あたりから、徐々にガス(※薄い雲)は濃くなってきたものの、これはこれで幻想的であった。
ガイドマップのコースタイムでは、登山口から歩き始めておよそ50分ほどで10合目の黒島山頂に着く。
登っている途中も風は強かったが、頂に出るとさらに強さが増し、場所によっては時々体がよろめくほどであった。
近くにある「黒島展望山」に登ってみたものの、視界は悪かった。晴れていれば広大な太平洋が見えるという。
展望山を後にすると、火口跡に雨水が溜まってできたという千代池へ。
渇水時には干上がるという池もこの日は少ないながらも水を湛えていた。霧が神秘的なムードを演出している。
池での雰囲気をしばらく楽しむと、裏砂漠と呼ばれる砂地地帯へ向かった。
ガイドマップの解説によると、「月のような世界が広がっている」とのことである。しかし、ガスでその全貌を見ることはできないので、自分勝手に広大な砂漠地帯を霧の先に夢想していた。イメージを膨らませ、あれこれ想像するもの悪くなかった。
裏砂漠には登山道を示す石が両脇に並べられている。この日のように視界が悪いときには特にありがたさを感じる。
昼食は太平洋や三宅島などを一望することができる裏砂漠展望地でとった。
この日、山頂付近は一日じゅう雲がかかっていたものの、お昼を食べている時に一瞬だけ、その一部が晴れて眼下に広がる断崖と大海原の絶景を見ることができた。
ほんのわずかな時間ではあったが、天上山のダイナミックな地形と見事な眺望に息を呑むと同時に山が持つ魅力の多様さを実感する。