川内村へのドライブの途中、ガソリンスタンドに立ち寄った時に、周辺をちょっと散歩していると建物の入口のところにこんな看板を発見。
「食品放射能検査場」。食べ物の放射能を検査する場所……。なぜそんな施設が?
原発事故の後、福島県で生産される農作物の多くは、放射能が国の基準以下であることを確認した上で出荷されている(お米以外は全量検査ではない)ので、一応安全ということになっているが、自分ちの畑で栽培した野菜や果物、山で採ってきた山菜やキノコなどは出荷のための検査対象にはなっていない。
それを測定する施設が「食品放射能検査場」。正式には「食品放射能簡易検査場」というらしい。川内村では現在4カ所の検査場が運営されていて、川内村の方なら誰でも無料で食べ物の放射能を計ってもらえるとのこと。
しかし、放射能の検査には、1kgの試料が必要で、試料はフードプロセッサーなどで細かく砕かなければならない(つまり、もう食べられない)し、細かく調べようとすると時間もかなりかかると聞いたことがある。
その辺のところを村の方に聞いてみると――
最近の検査装置は500gの試料にも対応している。
フードプロセッサーですりつぶすなどの下処理は検査場の人がやってくれる。
時間もだいたい30分くらいで、国の基準の100ベクレルとか、さらに安全をみた50ベクレルといったレベルよりもかなり低いところまで(つまり精密に)計ってもらえるのだそうだ。
たまたま見かけたこの検査場は集落の公民館で、休日だから閉まっていたが、平日は検査スタッフが常駐していていつもオープンしているという。
試料が500gで済むというのは、一般の人には朗報だ。しかし、大根とかタケノコのように重さがあるものならともかく、ちょっと山で採ってきた山菜を、とか、畑でとれたピーマンを、といった場合にはやはり困ってしまう。
それに、30分という計測時間にしても、かなり高性能な機械を入れたおかげで時間短縮されたとはいうものの、やはりそれなりの時間である。いくら無料とはいえ、その日食べるものをあれもこれもと持ち込むことは難しいだろう。
「どこで採れた何が50ベクレル超えだったよ」といった情報をみんなで共有しながら食べるものに気をつける。あるいは、たぶんベクレルは高いんだろうけどど、「もう俺は、タケノコも山菜も松茸も、イノシシ肉だって食べるよ。だって昔っから大好きなんだもんな、ずっとそれらを喰ってきたんだもの」と割り切って生きるか――。
「それにね、計ったのもは食べられないんだよ。すり潰してるんだから。で、検査したのが大丈夫だったからって同じような場所で採れたものを食べたら、その食べた方だけは高かったかもしれない。わかんないんだから。だから結局、目安でしかないの」
そんな話も聞いたこともある。
目に見えない放射線と向き合って生活するのは、こんなふうに難儀なことなのだ。しかしそれでも川内村に帰ってきている人は少なくない。小学校や保育園もやっている。同じように解除された土地でも、ドライブしながら見た感じでは、広野町や楢葉町とは違う。川内村には人の生活感がたくさんある。
一枚の看板から現実を教えられた気がする。川内村のことについて、あまりにも知らなすぎたと痛感する。
ちなみに――
福島県による検査実績の統計をみると、今年4月の川内村での検査件数(検体数)は福島市、いわき市、二本松市、伊達市、南相馬市、郡山市に次いで、全59自治体で7番目に多かった。(検体のうち50ベクレルを超えたものの割合は、検体持ち込み数上位6自治体で24%だったのに対して、川内村では19%)