箱根火山を温泉地学研究所のデータでチェック

活発な活動域が芦ノ湖方面へ移動している可能性

1日ごとの地震数は日によって変動はあるものの、気になるのが神奈川県温泉地額研究所が発表している震源分布図。

地震の震源が、盛んに噴気を上げている大涌谷のあたりから西に移動して、芦ノ湖の北、湖尻のあたりが中心になっているように見える。湖尻は海賊船のりばやキャンプ場、ゴルフ場、ホテルなどが点在する観光地だ。

火山活動は目には見えない地面の下で起きるから、火山性地震や火山性微動などさまざまな動きがどのような理由で発生しているのか、正確なところはよく分からないという。

しかし、地震と微動の違いはある程度明らかで、火山性の地震は地下で岩石が破壊されることで起きる。地中深くのマグマ溜まりからの圧力で岩盤が割れたり、あるいはマグマが新たな通り道を切り開くことで地震として観測されている可能性がある。一方、火山性微動は地中でマグマやガスなどの流動体が動くことで発生すると考えられている。噴火が起こる際のマグマの移動で微動が発生する場合もあるという。地震と微動は別の現象だが、箱根周辺の火山活動については、今後も注視し続けなければならない。

箱根火山の様々なデータを発表している神奈川県温泉地学研究所のページはこちら。

5月13日までの暫定解析で分かることと、その後

5月13日現在の暫定的な解析結果が発表されている。

特筆すべき点を抜書きする。

◆箱根火山では2001年、2006年、2013年と群発地震が発生したいるが、今回はそれらの年と比べて地震の増え方が明らかに速い

◆震源位置を高精度に測定した結果、活動の初期には大涌谷のごく浅い部分に震源が集中し、その後5月8日頃からは、神山や駒ケ岳の下深さ0~2kmに、さらに10日頃からは深さ2~4kmに震源が集中する場所が変化している。(現在では活動の中心がさらに湖尻方面に移動していると考えられる)

◆小田原・湯河原・御殿場など箱根をとりまく地点間の距離が、地震が頻発する時期にやや先立って伸びている。またGPSによる観測では、箱根の山体が全体的に膨張しているのが観測されている

◆山体に設置された傾斜計で測定された傾きの変化量も、2001年、2013年に比べてはるかに急激

GPSデータから推定した変位ベクトル | 神奈川県温泉地学研究所のページより

www.onken.odawara.kanagawa.jp

傾斜変動を起こす圧力源は、大涌谷や駒ヶ岳付近の比較的浅い場所にあると考えられます。一方、GPSの解析結果は、箱根山全体が膨張するような地面の変化をしめしており、より深い場所にも圧力源があることが示唆されます。

引用元:神奈川県温泉地学研究所【NEW !!】箱根山における火山活動 【暫定解析結果 5月13日現在】 - 箱根火山の活動 - トピックス

1週間前までの解析結果とその後の動向を考えると、箱根火山の活動は依然活発であり、噴火につながるとしても、その場所は特定し難いだろう。地震の増え方が急激であることから、過去の噴火に至らなかった火山活動の際に比べて、マグマの供給量が大きいことが考えられるが、噴火に至るかどうかは分からない。さらに、仮に噴火した場合でも、山体の浅い部分のみならず山全体の膨張が観測されていることから、噴火の規模が「小さい」と言い切れるかどうかもよくわからない。

人間が目にすることができない地下で起きているイベントなので、次に何が起きるのかを正確に予測することはできない。前回の噴火が3,000年前となると、有珠山のように周期的に噴火を繰り返す山とは違って噴火予知そのものが困難だと考えるべきだろう。

となると、観光業への影響を懸念するあまり「風評」と言ったり、大涌谷以外のエリアは安全だとアピールしたりするのは浅慮に過ぎる。箱根火山の動向については、毎日でもデータをチェックしたほうがいいかもしれない。そう、温泉地学研究所のページで。