さらに発見が続くHICのたまり水
4月15日付、東京電力の「日報」で、またしても高性能容器(HIC)の蓋周辺で水漏れやにじみが発見された。
HIC(High Integrity Container)にはセシウム吸着装置や多核種除去設備で出た高濃度廃棄物が収められ、コンクリート製の大きな箱状の施設(ボックスカルバート)に2基ずつ格納・貯蔵されている。(放射性能の自然減衰を待っている)
4月14日、10基のHICの現場調査を実施した結果、以下のとおり、1基のHICの蓋外周部に水溜まり、また、3基のHICの蓋外周部ににじみを確認。
【水溜まりを確認したHIC】 【製造番号】
・AH8ボックスカルバート内HIC→PO646393-197(水溜まり)
・E1ボックスカルバート内HIC →PO646393-211(にじみ)
・AG6ボックスカルバート内HIC→PO646393-187(にじみ)
・AH7ボックスカルバート内HIC→PO646393-185(にじみ)
4月2日に発見されて以来、これまでにたまり水等が発見されたのは以下のとおり。
【水溜まりを確認したHIC】 【製造番号】
・AJ5ボックスカルバート内HIC → PO646393-172
・AJ8ボックスカルバート内HIC → PO646393-182
・AK8ボックスカルバート内HIC → PO646393-194
・A1ボックスカルバート内HIC → PO641180-229
・AN6ボックスカルバート内HIC → PO646393-181
・AO7ボックスカルバート内HIC → PO641180-240
・AP6ボックスカルバート内HIC → PO641180-242
たまり水や拭きとった水の分析結果は、
AJ8 → PO646393-182で
全ベータ:3,900,000 Bq/L
トリチウム:1,500,000 Bq/L
といった極めて高い放射能を示している。とても結露とは考えられず、何らかの原因でHIC内部の汚染水が漏洩した(あるいは漏洩した汚染水と結露水が混ざってある程度薄められた)ものと考えられる。
HICとはどんなものか
【写真は多核種除去設備でのHICの交換風景】
高性能容器(HIC)は、汚染水処理で発生する濾過設備で放射性物質を濾しとった汚泥のような廃棄物や、放射性物質を吸収した吸着剤、濃縮された汚染水のような極めて汚染度が高い物質を保管する容器だ。密閉性が重要なのは言うまでもない。2012年8月2日付の東京電力の資料によると、HICは薬剤耐性の高いポリエチレン製で寿命は300年などと説明されている。
高性能容器の健全性評価について
(略)
3.健全性評価
(1) 腐食・化学的影響について
a.収容物(化学成分)
HIC本体はポリエチレンで構成されており,一部の有機溶媒を除き,一般的な化学薬品に対して良好な耐性を有する。
HICに収容する吸着材,沈殿処理生成物及び処理過程で添加する薬品成分(表3参照)が,SC DHECの認可においてHICへの収容を禁止した成分を含まず,収容物の化学成分に対してポリエチレンは安定している。
※ 「SC DHEC」:サウスカロライナ州健康環境局(S.C. Department of Health and Environmental Control)
(略)
6) 密閉性・ベントについて
密閉性については,SC DHECの認可要件として,保管期間等を考慮した信頼性の高いシールを選定することとされており,HICは密閉性のあるねじ込み蓋を採用している。
また,SC DHECの認可要件として内圧を開放するベントを設けることとされており,HICは可燃性ガスの発生を考慮し,蓋の内部にベントフィルタ(圧縮活性炭高性能フィルタを介したベント孔)を設けている。ベントフィルタは,ガスのみを通過させ,固形分を通し難い構造としており,HIC移送時等に,収容物の揺れ等が発生しても流出し難い。(図2参照)
なお, HICに収容した液体が一時保管施設貯蔵中に外部へ漏えいしないよう,収容物の体積膨張を考慮した空間容積を確保する。
また,ねじ込み蓋を開けることにより,HICの収容物を確認できる構造としている。
(7) 寿命について
SC DHECは,最低300年間は構造を維持し,廃棄物を収容していることを認可要件としており,上述の確認結果等から妥当と判断している。多核種除去設備で使用するHICについては,上述のような条件を満足しており,一時保管施設貯蔵中は問題とならない。
漏れてはならいし、漏れるはずがないものがHICの外に漏れているということだ。これは非常に重要な問題で、廃炉に向けてさらに大量な放射性物質が発生することを考えると、もっと注目されるべき事項だろう。